2022年秋に神奈川県内で発覚した犬・猫約160頭の多頭飼育崩壊から救出された保護犬2頭が21日、静岡県伊豆の国市の温泉旅館「伊豆長岡温泉 八の坊」で1年半ぶりに再会した。同旅館の看板犬・かずえ(メス)と神奈川県厚木市で飼われている結(ゆい)(オス)で、いずれもボーダーコリーに似た白い雑種で推定年齢は8歳。同旅館の5代目、望月敬太さん(39)は「目鼻立ちからきょうだいでしょう」と話している。
この多頭飼育崩壊では、多数のボランティアが奔走し、殺処分は防げたという。かずえは23年1月に、御殿場市で保護活動をする女性の橋渡しで同旅館に迎えられた。この女性が今年5月、神奈川県内の保護犬の譲渡会の会場を訪れた人の飼い犬がかずえにそっくりなのに気づき、ルーツが同じだと判明した。
かずえは旅館に来た当初は人を怖がり、散歩もできない状態だったが、今ではロビー事務所に「勤務」し、宿泊客の求めで「接客」もこなす。もう一頭の看板犬のチワワ「銀次」とも息はぴったり。銀次もペットショップで肺炎になった後、旅館が引き受けた。結の飼い主で会社員、橋爪環さん(57)も、「当初は警戒感が強かったが、家族との信頼関係はできた」と話す。
再会した2頭は当初、旅館のロビーでお互いを確かめ合うようなそぶりを見せたが、その後はたまに視線は送るものの、思い思いにロビーでくつろいだ。「ずいぶんたちますから、記憶も遠くなっているのでしょう」と望月さんはいう。
同旅館は2021年に飼い犬との宿泊に特化してリニューアルした。名前や食べ物の好みなど顧客(犬)データを収集する中で「年齢不詳」の犬の存在に気づいたという。望月さんは「恥ずかしながら以前は保護犬のことを考えたことがなかった」というが、今では保護犬の譲渡会にロビーを提供したりしている。【若井耕司】