自民党が、「政治とカネ」を巡る処分や不祥事などで生じた衆参の空白区への対応に苦慮している。離党者に対抗馬を立てれば保守分裂選挙となりかねない一方、対応せずにいても、有権者から「処分された議員らに対する温情だ」と受け取られる恐れがあるためで、執行部は慎重に対応を検討する。
「厳しい状況であっても勝利をつかみ取ることができる体制を整えなければならない」
岸田首相(党総裁)は25日、党本部で開いた選挙対策本部会議でこう述べた。
自民はこの日、来年夏の参院選の1次公認の候補予定者として選挙区28人、比例選17人を発表した。党派閥の政治資金規正法違反事件で離党した世耕弘成・元経済産業相と大野泰正参院議員の選挙区では公認候補予定者の決定を見送った。
小渕優子選挙対策委員長は終了後、理由について、記者団に「県連で調整や議論が進んでいる」と述べるにとどめた。
離党者の選挙区で新たな公認候補予定者を選んだ場合、無所属で出馬した離党者との間で保守票が割れ、いずれの候補にも不利に働く可能性がある。執行部としては、野党が漁夫の利を得る状況は避けたいところだ。
ただ、こうした対応は、「復党に含みを持たせるような動きだ」と有権者に映るリスクもある。自民中堅は「自民への逆風が強まる可能性がある」と気をもむ。
衆院でも事情は同じで、規正法違反事件を受けて離党した塩谷立・元文部科学相の静岡8区や、除名となった池田佳隆衆院議員の愛知3区などが空白区のままだ。
次期衆院選の和歌山新2区を巡っては、和歌山県連が、規正法違反事件を巡る政治的な責任を取るため不出馬を表明した二階俊博・元幹事長の三男、伸康氏を立候補予定者に決めたが、党本部による公認決定には至っていない。
公職選挙法違反事件で有罪が確定した柿沢未途・前衆院議員(離党、議員辞職)の東京15区や、4月の衆院補欠選挙で敗れ、支部長が辞任した島根1区などの候補者選びも課題となる。
参院選候補予定者(1次公認)計45人は以下の通り。(敬称略)
【選挙区】
北海道 岩本剛人(59)現、高橋はるみ(70)現▽青森 滝沢求(65)現▽宮城 石川光次郎(57)新▽山形 大内理加(61)新▽福島 森雅子(59)現▽茨城 上月良祐(61)現▽栃木 高橋克法(66)現▽群馬 清水真人(49)現▽千葉 石井準一(66)現、豊田俊郎(71)現▽富山 堂故茂(71)現▽福井 滝波宏文(52)現▽山梨 森屋宏(67)現▽静岡 牧野京夫(65)現▽愛知 酒井庸行(72)現▽三重 吉川有美(50)現▽京都 西田昌司(65)現▽兵庫 加田裕之(54)現▽奈良 堀井巌(58)現▽広島 西田英範(42)新▽山口 北村経夫(69)現▽香川 三宅伸吾(62)現▽福岡 松山政司(65)現▽佐賀 山下雄平(44)現▽熊本 馬場成志(59)現▽大分 白坂亜紀(58)現▽宮崎 長峯誠(54)現
【比例選】
赤池誠章(63)現、有村治子(53)現、石田昌宏(57)現、佐藤正久(63)現、田中昌史(58)現、中田宏(59)現、橋本聖子(59)現、比嘉奈津美(65)現、本田顕子(52)現、宮崎雅夫(60)現、和田政宗(49)現、犬童周作(56)新、釜萢敏(71)新、見坂茂範(56)新、繁本護(51)新、東野秀樹(52)新、宮窪大作(49)新