顧客や取引先から不当な要求や過剰な苦情を受ける「カスタマーハラスメント」(カスハラ)が社会問題化する中、伊方町役場で昨年、町民から 執拗 な苦情や言いがかりを受け、50歳代の男性職員が体調を崩し、退職する事案があった。八幡浜署に脅迫容疑などで告発したという親族の男性は「仕事を辞めるまでに追い込まれた。(加害者には)責任をとってもらいたい」と訴えている。(斎藤剛)
親族の説明では、課長補佐だった被害者は昨年1月、関係する業務で町のバスを借りた町民の男性(50歳代)から「車内で排ガスの臭いがする」と指摘を受けた。修理工場で点検したところ、異常はなかったというが、バスの返却後も加害者から苦情が続いた。
同3月には「副町長を呼べ」などと要求され、被害者と上司が加害者の自宅を夜に訪問。翌朝まで約8時間、苦情や脅しとも取れる暴言を受けたという。
その際に被害者が録音していた音声では、加害者は「木刀持って後ろからぶち破っちゃってもいいくらい」「おれがお前の家に行く。お前がいなかったら嫁がいるやろうし、待たせてもらう。延々と話をしようぜ」「お前の部下の前で毎日のように恥をかかしてやろうか」などと言っている。
その後、被害者は精神的に追い込まれて仕事を休み、昨年8月に退職したという。
町も対策強化
町はこの事案を受け、昨年、「不当要求行為等対策条例」を制定し、庁舎内にカメラを設置するなどのカスハラ対策を講じた。今年3月には、職員の名札を漢字のフルネームから、名字のみをひらがなで表記する方法に改めた。役場の電話も録音機能付きに替え、外部からかかってくる電話を記録できるようにした。
カスハラ事案について、町総務課は「警察などが捜査中なので、詳しいことは説明できない」としている。