条件を満たした立ち乗りの二輪車「電動キックスケーター」を「特定小型原動機付き自転車(特定原付き)」と位置づけ、免許なしで乗れるように定めた改正道路交通法の施行から、7月で1年が経過した。手軽さから利用は拡大しているが、危険な走行による交通違反は6月末までに2000件を超え、歩行者や自転車との接触事故も発生。府警はルールの周知や取り締まりを強化している。(山口佐和子)
7月17日、多くの人や車が行き交う大阪・ミナミ(大阪市中央区)で、スケーター利用者が人混みの中を速度を落とさず走行したり、信号無視したりしていた。
「止まりなさい」。府警の警察官が呼び止め、交通違反の反則切符を交付すると、利用者らは「歩道での速度が時速6キロまでなんて知らなかった」などと弁明した。府警はこの日、約2時間の一斉取り締まりを行い、利用者13人に反則切符を交付した。府警交通指導課の松尾好記警視は「まだまだルールが浸透していない」と話す。
シェアリング業者「ループ」(東京都)によると、府内の貸し出し拠点は約1100か所(7月現在)。20~30歳代の若者が買い物や通勤、通学などで日常的に使うことが多いという。
利用者の増加に伴い、交通ルールを無視するケースも増えている。府警によると、特定原付きの交通違反件数は、昨年7月は25件だったが、今年6月は約14倍の359件に上った。
1年間での交通違反は計2095件に達した。特定原付きが歩道を走行する場合、時速6キロ以下しか出せないモードへの切り替えが必要だが、切り替えずに歩道を走る「通行区分違反」が最多の1171件だった。そのほか、「信号無視」が277件、2人乗りなどの「定員外乗車」が273件と続いた。
スケーターによる人身事故も、1年間に38件起きた。1月30日には大阪市中央区の交差点で、50歳代の男性が運転するスケーターと60歳代の女性が乗る自転車が出合い頭に衝突し、女性が脚を骨折する重傷を負った。男性は一時停止していなかったという。
府警は「車と同じ安全意識を持ち、ルールを理解して運転してほしい」と訴えている。
◆改正道路交通法=電動キックスケーターは従来「原付きバイク」に区分されていたが、車体の大きさや最高速度が時速20キロ以下などの条件に加え、前照灯、方向指示器、ナンバープレートなどを装備して保安基準を満たせば「特定小型原動機付き自転車(特定原付き)」とすると規定。16歳以上であれば、免許がなくても運転できるようになった。自転車と同じく原則車道を走行し、2人乗りや飲酒運転は禁止されている。