教員の過重労働、自治体側に賠償命令 明らかになった「過労死ライン超えでも放置」の実情

大阪府東大阪市立中の男性教諭(43)が、適応障害を発症して休職したのは長時間労働が原因だとして、市と府に慰謝料など計660万円を求めた訴訟の判決が9日、大阪地裁であり、小川嘉基裁判長は校長の責任を認め、府市に計220万円の賠償を命じた。
判決によると、教諭は週22コマの授業のほか、学年主任、進路指導主事、野球部顧問などを担当し、令和3年11月に適応障害を発症。直前半年間の時間外勤務は月85~165時間だった。
小川裁判長は判決理由で、こうした勤務が「著しく過重」と指摘。教諭は校長に対し、不眠症状などを理由に業務量を減らしてほしいと要望したのに、校長は従来通り続けるよう指示したという注意義務違反があったと認定した上で、発症との因果関係も認めた。
原告代理人の松丸正弁護士によると、教員の長時間労働が社会問題化する中、これまでの同種訴訟でみられた「教員の時間外勤務は『自主的な活動』で学校側に責任はない」という主張は、府市側から行われなかった。
また訴訟の中では、市が「過労死ライン」といわれる月平均80時間超の時間外勤務をした教員らをリスト化していたことも判明。中には月194時間に上る人もいた。ただ、勤務時間を把握する一方、産業医面談を受けさせるなどの対応策は取っておらず、運用改善を盛り込んだ和解案も受け入れられなかった。
判決後に会見した教諭は「現場では異常な働き方が当たり前になっている。授業に集中し、子供に向き合えるよう、今日の判決が全国で働き方改革が進むきっかけになってほしい」と話した。

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