東京女子医科大学(東京都新宿区)で16日、臨時評議員会が開かれ、今月7日に理事長を解任された岩本絹子氏(77)を理事と評議員からも解任した。岩本氏は全役職を解かれた。同大は16日、文部科学省への改善計画提出に向け、企業再生や内部統制を専門とする外部有識者5人による諮問委員会を設置した。
関係者によると、この日の臨時評議員会では、岩本氏を理事と評議員から解任する決議が出され、賛成多数で承認された。
今月2日に公表された第三者委員会の調査報告書によると、岩本氏は1973年に同大を卒業し、81年に産婦人科クリニックを開業。2013年に同窓会組織「至誠会」代表理事に就任した。14年には同大副理事長、19年に理事長に就いた。
同大では14年、鎮静剤の投与後に2歳の男児が死亡する事故が発生。患者の減少や「特定機能病院」の承認取り消しで経営状況が悪化し、大学再建を担ったのが岩本氏だった。
だが、岩本氏直轄の「経営統括部」に権限が集中し、不正を招いた。岩本氏が経営したクリニックの元職員が同部次長に就き、至誠会と大学側から「二重給与」が支払われたほか、この元職員が管理する複数の会社に、同大関連工事の元請け業者から「サポート料」名目などで1億円超が支払われていたことも判明した。
二重給与問題を巡り、警視庁の捜索を受けたことから、同大は4月に第三者委員会を設置。調査報告書では、岩本氏が必要な承認を得ず、至誠会から役員報酬とは別に「顧問料」や「現金賞与」を得ていた疑いなども明らかになった。
同大を巡っては、教員人事や子女枠の推薦入試で至誠会への寄付額を考慮するなど不適切な事案が相次いでおり、報告書では岩本氏だけでなく、他の理事についても「(岩本氏の)一強体制に取り込まれた」と監督責任を厳しく指摘した。
関係者によると、大学再建のめどがたちしだい、新理事長に就任した肥塚直美・同大病院長を含む理事や監事は全員が辞任する意向を固めているという。