東京電力が21日にも、福島第一原子力発電所2号機で溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し作業を始めると報じられ、SNS上で《やっと?》《ようやく?》などと話題となっている。
2011年3月に発生した福島原発事故では、東電は当初、炉心溶融(メルトダウン)の可能性を否定していたものの、後に確認され、炉内や施設の金属などが混ざった放射線量の高いデブリが1~3号機に計約880トンあると推計されている。
デブリの取り出しは事故後で初めてで、計画によると、原子炉脇から釣りざお式装置の爪を挿入し、採取するという。成分などを分析した後、本格的な取り出し作業の参考にするというのだが、ネット上で意見が飛び交っていたのが、採取する量だ。
約2週間を予定している作業で、採取する量は「3グラム以下」と報じられていたため、《3グラムずつなら、すべてのデブリを取り出すのに40億年ぐらいかかるぞ》《事故から11年も経つのに、耳垢程度の3グラムしか採取できないのか》などと悲観的な見方が広がったのだ。
もっとも、今回予定されるデブリ取り出しは、あくまで試験的なものだ。本格的な取り出し作業が始まれば、さすがに1回の採取量が数グラムではないだろう。とはいえ、改めてハッキリしたのは政府・東電の廃炉中長期ロードマップがすでに破綻した可能性が高いことだ。
■廃炉中長期ロードマップでは2041~51年に完了だったが……
ロードマップでは、廃炉作業の起点を2011年12月として、それから30年~40年後の2041~51年に完了するとされているのだが、2022年3月16日の参院経済産業委員会で、日本共産党の岩渕友議員(47)はこう指摘していた。
「880トンのデブリ取り出すというふうに考えた時に1日仮に10キロ取り出しても約240年掛かるんですよ(略)仮に今日からあのデブリの取り出しを始めたとして、40年後といってももう既に10年以上過ぎているので、これ毎日今日から取り出したとしても1日約80キロ取り出さなくちゃいけない(略)ただの土を取り出したりするのとは訳が違うので、そういう点から考えても、これとても現実的だということは言えない」
岩渕氏が「ただの土を取り出したりするのとは訳が違う」と指摘したのは、採取した放射線量の高いデブリをどう処理し、どこに保管するのかが決まっていないという問題だ。
この課題について、東電ホールディングスの社長は国会で、「燃料デブリの一時保管施設を2020年代後半頃に検討」と説明。だが、通常の使用済み核燃料の廃棄さえも受け入れ場所を巡って反対運動が起きているわけで、デブリの保管場所について確保するのも簡単ではないだろう。
《今世紀中に廃炉は無理だな》《福島原発処理は次世代、次々世代へのツケ回しは決定》
SNS上でこんな声が出るのも当然だろう。
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