「殺しはしない」大学生が言われるがまま強盗、招いた最悪の事態 「ルフィ」広域強盗事件

「ルフィ」と名乗る男らが指示したとされる広域強盗事件のうち、令和5年1月に東京都狛江市で当時90歳の女性を暴行して死亡させるなどしたとして、強盗致死罪などに問われた無職、中西一晟被告(21)。21日の初公判で行われた検察側や弁護側の冒頭陳述などからは、平凡な大学生だった被告が年上の知人からの「闇バイト」への誘いに応じ、指示役に言われるがままに強盗に手を染めた末、女性が死亡する最悪の結果を招いた安易な経過が浮かび上がった。
ネットゲームの知り合いに誘われ
「強盗についてのみ認めます」。21日午前、東京地裁立川支部の証言台で起訴内容について問われると、中西被告は小さな声で答えた。
検察側の冒頭陳述などによると、強盗のきっかけは4年12月、ネットゲームを通じて知り合い、東京都中野区の自宅に居候していた加藤臣吾被告(25)=同罪などで起訴=に闇バイトに誘われたことだった。
加藤被告は、闇バイトを仲介する「シュガー」と名乗る指示役を紹介。秘匿性の高いメッセージアプリ「テレグラム」でのやり取りが始まった。
検察側の証拠によると事件3日前の5年1月16日には中西、加藤の両被告らを含むチャットグループで、指示役から具体的な計画が伝えられた。
《服は上下、捨てられるようにしてください。殺しはしませんが、最悪のことを考えて、すべて捨てます》
指示役から次々と指令
事件前日、両被告ら実行役4人が合流。当時19歳の中西被告は結束バンドのほかに宅配業者を装うための段ボールを買い、加藤被告らはバールを購入した。
《落ち着いて、迅速に、的確に》
19日午前には「キム」を名乗る指示役からそんな指示が飛んだという。
同日昼前、4人が宅配業者を装って東京都狛江市の民家のインターホンを鳴らした。出てきた女性の両手首を中西被告が結束バンドで縛ると、別の男がバールで殴ったとされる。4人は腕時計などを奪って逃走。女性は死亡が確認された。
検察側によれば、その後もスマートフォンからの指示は飛び続けた。4人は翌20日には足立区内で強盗を試み、失敗。中西被告は海外逃亡を勧めるキムから送られた偽造運転免許証を使い、故郷・石川県でパスポート取得を試みて見破られ、身柄を確保された。
弁護側によると、逮捕後は「毎日反省文を書いている」という中西被告。判決は9月6日に下される。(橘川玲奈)

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