紅麹サプリ利用者、小林製薬を初提訴 症例把握後の摂取で「腎障害」と主張

小林製薬の紅麹(べにこうじ)サプリメントを巡る健康被害問題を巡り、大阪府の40代男性がサプリを摂取して腎障害になったとして、同社を相手取り、慰謝料など約495万円を求める訴えを大阪地裁に起こしたことが4日、分かった。小林製薬によると、一連の問題で損害賠償請求訴訟を起こされたのは全国で初めて。
男性がサプリの摂取を始めたのは、小林製薬が最初の症例を把握した1月以降。公表まで約2カ月を要した対応が問題視されてきた中、組織的な判断が適切だったのかが今後、司法の場で問われることになる。
訴状によると、男性は1月23日に「紅麹コレステヘルプ」をインターネットで購入し、摂取を始めた。3月22日の問題公表後に検査を受けた結果、数カ月前に異常がなかったという腎臓の血液検査の数値が悪化していることが判明。薬剤性急性腎障害などと診断されて通院を続けたが、腎臓に後遺症の機能障害が残っているという。
小林製薬が医師から初めてサプリに関する腎障害の症例報告を受けたのは1月15日で、原告側は公表が早ければ「損害が発生しなかった可能性が高い」と主張している。
提出された答弁書によると、小林製薬は争う方針。ただ、摂取と症状との間に関連性があるとみられる患者への暫定的な対応として、医療費などとして男性に4万円超を支払い済みだという。
小林製薬は「個別のお客さまとのやりとりに関する回答は差し控える」としつつ、「紅麹コレステヘルプなどの摂取によって健康被害にあわれたお客さまに対しては、訴訟を提起されたか否かを問わず、誠実かつ適切な補償を行う」とした。
小林製薬では8月19日から補償の受付を開始。医療費などに加え、慰謝料や休業補償、後遺障害による逸失利益も算定し、支払うとしている。
公表遅れ、注目される司法判断
紅麹サプリの健康被害問題を巡る小林製薬の情報開示に対する姿勢は、発覚当初から批判を集めてきた。全国初となる今回の訴訟でも、原告側は公表の遅れが被害拡大につながったと主張しており、司法判断が注目される。
小林製薬が公表した外部の弁護士による検証委員会の報告書によると、1月15日に医師からサプリに関する腎障害の症例報告を初めて受けたのに続き、2月1日には別の医師から3件の症例報告があった。この医師からは同様の事例を把握しているかを尋ねられ、小林製薬の担当者は「報告がない」と応答。「注意喚起をしたほうがいい」との助言も受けたが、一切対応しなかった。
小林製薬は社内で原因の検討を始め、同6日に創業家の小林章浩社長(当時)に問題を報告。その後、小林一雅会長(同)にも詳細を報告した。
しかし、同社が商品回収や情報開示に向けて動き出したのは、製造過程で何らかの物質が混入した可能性が確認された3月15日以降。同20日夜に社外取締役に報告した後、さらに2日後に行政への報告や記者会見を行った。最初に被害を把握してから、すでに2カ月以上が経過していた。
報告書は情報開示の遅れについて、重大な健康被害の連絡を受けた際に「健康食品を摂取する消費者の安全を最優先に考えることができていなかった」と断じた。

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