群馬3人死亡事故 飲酒運転含まず起訴 遺族「到底納得いかない」

群馬県伊勢崎市の国道17号で5月、トラックが車2台と衝突し家族3人を含む男女5人が死傷した事故で、前橋地検は10日、トラックを運転していた同県吉岡町の会社員、鈴木吾郎容疑者(69)を自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で起訴した。地検は認否を明らかにしていない。
起訴状などによると鈴木被告は5月6日午後4時15分ごろ、伊勢崎市境上矢島の国道17号で、中型トラックを運転中、時速約90キロまで急加速するなどして対向車線にはみ出し、乗用車2台と衝突。乗用車を運転していた前橋市桶越町の会社員、塚越寛人さん(当時26歳)と息子の湊斗(みなと)ちゃん(同2歳)、塚越さんの父で渋川市赤城町宮田の会社員、正宏さん(同53歳)を死亡させ、ほかの車を運転していた太田市の女性派遣社員に軽いけがをさせたとしている。
県警は8月、鈴木被告がアルコールを摂取した状態で運転したとして同法違反(危険運転致死傷)の容疑で逮捕していた。起訴内容に飲酒運転が含まれなかったことについて、布村希志子次席検事は「本件は継続捜査中で捜査に影響するため、詳細な回答は差し控える」と述べた。
起訴を受け、亡くなった塚越寛人さんら家族3人の遺族は毎日新聞などに「飲酒してトラックを運転し、法定速度をはるかに超えるスピードを出し、縁石を乗り越えて対向車線に突っ込み、尊い3人の命を奪った加害者の行為が、(自動車運転処罰法の)過失致死傷罪で済まされることには到底納得がいきません。捜査機関の方々には、引き続き捜査に尽力していただき、事故の原因を追及してもらいたいと思います」とコメントを寄せた。
「守ってあげられなくてごめん」
寛人さんの妻で湊斗ちゃんの母親によると、寛人さんは「家族思いで、私と湊斗を受け入れて全てを包み込んでくれる優しい人。休みの日はご飯を作ってくれて、私が困った時は必ず助けてくれて、頼りになる人」だったという。湊斗ちゃんについては「他の子が泣いていると大丈夫?と心配のできる優しい子」で「お手伝いやお片付けを頑張ってやってくれたり、ママに毎日大好きと言ってくれて、全力で毎日を楽しんでいました」と振り返った。自身は7月に出産しており、「寛人は湊斗や新しく生まれてきた子の成長を見るのがどれだけ楽しみだったか。湊斗にはもっとこの世界の事を知ってほしかったです。これから先もっと楽しい事が待ってたかと思うととても悔しいです。守ってあげられなくてごめんねと毎日謝っています」と胸の内を明かした。
正宏さんの妻(53)は今年が結婚30年で、正宏さんについて「子育ても協力的で優しく頼りになる人でした。夫婦げんかもした記憶はなく、ほんと楽しく毎日を送っていたのにもう帰ってこないんです」とコメント。「運転していた寛人の気持ち、私には、想像できないほどの恐怖で怖かったかと考えるだけで心が壊れ張り裂けそうです。寛人、主人は湊斗だけは助けたいと思っていたと思います。そう思うと、涙があふれてとまりません。会いたいです。3人に……」と吐露した。【日向梓】

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