「女性が輝く」「ジェンダー平等」掲げる大阪万博、協会幹部は19人全員男性…参加国から「ショッキング」の声も

2025年大阪・関西万博は、女性が輝く万博を掲げ、ジェンダー平等の実現を目指している。しかし、万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)の事務局は、局長級以上の19人全員が男性だ。国内外から厳しい目が注がれている。(石見江莉加)

6月25日、万博協会が各国の担当者らを集めて開いた国際参加者会議(IPM)。アフリカの女性が突然立ち上がり、「女性にも前に立つ機会をもっと与えるべきではないか」と女性活躍の重要性を説いた。
女性の発言の背景には、登壇者の男女比が極端に偏っていたことがあったとみられる。関係者によると、あるセッションでは、壇上に並んだ日本の担当者9人全員が男性で、参加国の関係者は「ショッキングだった」と振り返る。
万博は「ジェンダー平等」を含むSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて貢献するとしている。
協会事務局は、元官僚の石毛博行事務総長をトップに、5人の副事務総長を置く。その下の部局の局長級13人も含め、19人全てが男性。職員約770人のうち女性は17%(4月1日時点)で、意思決定の権限があるポストは男性に偏重している。
「『マネル』にならないようにしなければならない」。国連パビリオンのマーヘル・ナセル代表は取材に対し、こう強調した。「マネル」とは、男性(Male)ばかりで構成される会議(Panel)という意味だ。ナセル代表は「協会はあらゆる機会を生かして女性の管理職を登用していくべきだ」と訴えた。

こうした指摘に対し、万博協会側はどう答えるのか。
万博協会は国や地方自治体、企業などから出向した職員で構成されている組織。担当者は「女性登用の必要性は認識しているが、出向元の協力で成り立っており、協会の意向だけで進められない」と説明する。
万博協会も無関心なわけではない。重要事項を決定する理事には、女性を多く選任。現在、理事34人中14人が女性で、池坊専好・華道家元池坊次期家元や小川理子・パナソニックホールディングス参与らが名前を連ねる。
万博会場では、ジェンダー平等や多様性の取り組みを紹介する「ウーマンズパビリオン(女性活躍推進館)」の建設も進む。万博協会と政府、仏宝飾品ブランド「カルティエ」が共同運営し、女性活躍を後押しする展示内容になる見込みだ。

万博では、女性の存在感が際立つ参加国も多い。
オーストラリアのパビリオンを出展する同国外務貿易省のチームは、17人中13人が女性。ナンシー・ゴードン政府代表は「性別を見ず、個々の能力を重視して採用した結果、今回は女性が多くなった」と説明する。
自身も、2人の子どもを育てながら外交官として働いてきた。「男女にかかわらず、多様な人々から出てくるアイデアで社会問題の解決方法を見いだすのが万博の意義だ」と強調する。
英国やカナダ、インドネシア、ブラジルも女性の政府代表がパビリオンを率いる。ブラジルパビリオンのマリア・ルイーザ・クラーヴォ政府代表は「科学や文化など様々な分野で活躍する女性たちを紹介し、スキルや知識を女性に身につけてもらうセミナーも開催したい」と計画を明かした。

太田肇・同志社大教授(組織論)の話「ジェンダーバランスに配慮するのは世界基準だ。寄り合い所帯だとしても、元の所属組織での役職にこだわらずに職員を配置すれば管理職の男女比が偏ることはなかった。世界から注目される万博で、従来の日本の組織作りとは違った人材の登用を進めていくべきだ」

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