文科省の愚策「無免許オリンピアン教員」に現場憤慨!《講演会とはワケが違う》と識者も痛烈批判

文部科学省が来年度から、五輪・パラリンピック出場経験選手の教員採用を支援する方針を固めた。教員免許を持たない高い専門性を持つ外部人材に「特別免許」を与えるという。
「あまりにも現場のことを知らなさすぎる」と呆れるのはスポーツライターの津田俊樹氏だ。
「教員不足とアスリートのセカンドキャリア問題、この2つを一気に解決できて一石二鳥だという、いかにも文科省が考えそうな安易な発想です。私の知人で、高校で陸上を教える体育教師に話を聞くと、『現場の実情や苦労が分かっていない』と憤慨していました。教育現場は授業だけではありません。いじめ問題や進路指導、最近ではモンスターペアレンツのような親との問題も多い。先生たちが頭を悩ませるのは授業よりむしろそちらの方。それらをオリンピアンたちが担えるのか。途中で投げ出したり辞めたりされては、周囲の教員や生徒にも迷惑がかかる。オリンピアンにどこまで教師としてふさわしい人材がいるのかというのも疑問です」
つい先日も、1994年リレハンメル冬季五輪のスピードスケート銅メダリストから政治家に転身した堀井学前衆議院が公選法違反などで逮捕されたばかりだ。盛山文科大臣は「多様な人材を学校現場に取り込むことが重要。経験や努力を生かして教育活動に参加してもらうことは、児童生徒や他の先生にとってプラスの効果がある」と話したが、学校の授業はトークショーではない。
「ゲストティーチャーとして、母校の後輩に体験談を話す講演会とはワケが違います。その類いの講演会にしても、『夢を諦めるな。好きなことを続ければ夢は必ず叶う』というお決まりの話で終わるのが常です。果たしてオリンピアンが教師として継続して生徒と向き合えるのか。大学の非常勤講師ですら、授業の準備は大変な労力と時間がかかるのですから」(津田氏)
文科省は、オリンピアン教師は1つの学校での勤務にとらわれず、小中学校を兼務して小学校では体育の授業、中学校では部活動を指導するケースも想定しているという。1つのクラスを受け持って生徒と向き合う従来の担任教師とはまったく違った形だ。そうなれば、他の教師たちとオリンピアンの関係性に軋轢が生じる可能性もある。
「教員免許を持つ教師とオリンピアン教員とで待遇の問題も出てくる。教師たちからは『メダリストだからと特別扱いするべきではないのに、免許がないのにもかかわらずなぜそんなに優遇するのか』といった不満も出てくるでしょう。お役所はそういう現場の状況を分かっていないのです」(津田氏)
来年4月から実現するというこの施策。すぐに教育現場を混乱させる愚策として見直しを迫られることになるかもしれない。

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