小川彩佳「統一教会の再調査は?」→9人全員が沈黙…自民党が「もうええでしょう」で終わらせたい“裏金&統一教会問題”の深すぎる闇

自民党総裁選の真っただなか、もっと驚いたほうがよいのでは? というニュースが2つあった。
1つ目はこれ。
・自民「公平報道」を要請 総裁選、新聞・通信社に(9月10日共同通信)
《各社の取材は規制しないとした上で、インタビューや取材記事、写真の内容や掲載面積に関し「必ず各候補者を平等・公平に扱うようお願いする」とした。》
要はメディアへの介入である。新総裁が次の首相になるなら有力候補が何を考えているか、どんな人物なのかという報道が多めになるのは当然のことだ。
私は8月の当コラムで新総裁が誕生して解散総選挙をすることになった場合《自民党は今度はテレビ局に「公平中立な報道を」とけん制しまくる。お約束のこの振る舞いは今回も見どころの一つ。》と書いたが早々に的中してしまった。
自民党は2014年の衆院選の際、報道の公平性などを求める文書を在京テレビ各局に送っていた。差出人は萩生田光一筆頭副幹事長と福井照報道局長の連名。
あのときの「効果」についてメディアは萩生田氏に文書を送って尋ねてほしい。
続いての驚きのニュースはこちらだ。
・衆院選10月27日の見方拡大 政府、1日国会召集を伝達(9月12日共同通信)
臨時国会を10月1日に召集する方針というもの。
《自民内には、新首相誕生の勢いを維持したまま、速やかに衆院選を実施する日程に期待の声がある。》
総裁が誰になるかわからないのに、衆院選の手際がやたら良い
これは総裁選の告示日のニュースである。まだ誰が自民党の「顔」かわからない。しかし衆院選は速やかにできるようやたら手際が良い。
どこか既視感があると思ったら話題のNetflixドラマ『地面師たち』だ。土地の所有者になりすまし、土地を売る契約を速やかに迫る地面師たちのあの手口である。新総裁誕生という“刷新感”があるうちにさっさと衆院選をやってしまえという「自民師たち」に見えてきた。
あれ、国会論戦は? 裏金問題は? と問われようものなら「もうええでしょう」と言いそうな勢いである(ドラマの中で法律屋役であるピエール瀧がピンチを切り抜けようとするときのセリフ)。
実際、「裏金問題、もうええでしょう」という認識があらわになった記事があった。石川県の北國新聞が掲載した森喜朗インタビューが凄かったのだ(9月16日)。
森氏は「うちの派(旧安倍派)の連中は苦しんでいる」との前置きから、《萩生田(光一前政調会長)さんとはいろいろを話している。今はつらいだろうが、ここを乗り越えてこそ大成できる」と伝えている。》と語っていた。
まるで萩生田氏が事故にでも遭って耐え忍んでいるかのような言い方だ。萩生田氏は政治資金収支報告書に不記載の裏金額が計2728万円(5年間)もあったことが明らかになったわけで被害者でもなんでもない。森氏の認識も凄いが「不記載」「裏金」の文字を一切使わずにこの記事を書く北國新聞も凄かった。
しかし森喜朗の願いもむなしく、翌日にまた萩生田氏にスポットライトが当たってしまう。
『安倍氏、旧統一教会会長と面談か 13年参院選直前 総裁応接室 萩生田氏・岸氏も同席』(9月17日・朝日新聞)
朝日新聞のスクープである。1面に載せた写真には旧統一教会の会長らと記念撮影する当時の安倍首相のほか、萩生田氏もバッチリ写っていた。
これまで「党として教団との組織的な関係はない」と繰り返してきた自民党だが、互いのトップと幹部が選挙協力のための面談をしていた濃厚な証拠が出たのである。
22年7月の安倍氏銃撃事件をきっかけにおこなわれた、教団側との接点の調査については議員の自己点検に委ねられた。安倍氏は点検の対象外とされ、岸田文雄首相は国会で「お亡くなりになった今、確認するには限界がある」と調査自体を拒んできた。
しかし今回の写真と記事である。複数の関係者は「4日後に公示を控えた参院選で、自民党比例区候補の北村経夫・現参院議員を教団側が全国組織を生かして支援することを確認する場だった」と話している(同前)。
「裏金」と「旧統一教会」の“二刀流”がクローズアップされた萩生田氏
萩生田氏は朝日新聞の取材に対し、「私です」と写真の人物が自分であることを認めた。一方で記録も記憶もなく、北村氏の選挙支援について話をしたかも「わからない」という。「今はつらいだろうが、ここを乗り越えてこそ大成できる」と森喜朗に言われた萩生田氏だが、あらためて「裏金」と「旧統一教会」の“二刀流”がクローズアップされたのだ。
総裁選の時期に旧統一教会問題をぶつけてきたのは朝日の意地悪ではなく問題提起だろう。それより私が注目したのは安倍首相らが教団に票の依頼をしたという北村経夫氏について「元産経新聞政治部長の北村氏」と朝日が強調していたことだ。
翌日の記事では「元産経新聞政治部長の北村氏は初めての選挙で知名度に乏しく、票の積み上げが必要とされていた」とまたも丁寧に書いていた。朝日新聞の意地悪を言うならこっちである。産経新聞はイライラしているに違いない。
「13年の時点で情報を得ていた」鈴木エイト氏が語ったこと
『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)などの著書があるジャーナリストの鈴木エイト氏は、「私は13年の時点で、『党内の有力議員を通じて教団が安倍政権に接近した』との情報を得ていましたが、その有力議員が誰なのかわからなかった。この写真により、萩生田氏が教団と安倍・岸家とのつなぎ役だった可能性が浮かび上がってきました」と語る。
再調査の必要性を訴え、総裁選でも徹底調査を公約にすべき問題であるとX(旧ツイッター)でも発信している。
再調査については興味深い場面があった。17日の「news23」(TBS系)で、小川彩佳キャスターが9人の候補者に対し、自身が総裁になった場合、教団との関係に関する再調査を行うかどうか問いかけたが、挙手する候補は皆無だった。あれだけ「必ず各候補者を平等・公平に扱うようお願いする」と文書で圧をかけていたのに、いざ平等・公平に質問したら放送事故のような静けさだったのである。
さてここまで書いてきたが「裏金」と「旧統一教会」の2点セットから見えてくるものは何だろう? それは「有権者は選挙に行ったほうがいい」という当たり前の結論だ。
裏金問題の重要点はその裏金を何に使ったのかだ。もし選挙で特定の人々のために使っていたら民主主義から対極の行為になってしまう。一方で投票率が低ければ低いほど旧統一教会のような組織票すらも反映されやすくなる。選挙に行っても変わらないなどと言っているとシメシメと思う人や組織がいるのだ。
だから私たちは選挙に行ったほうがよいのだ。いろんな意見や考えを反映させたほうがいい。これが「裏金」と「旧統一教会」問題の共通の教訓である。それにしても秋になるにつれて萩生田祭りのにぎわいが一段と凄くなってきました。
(プチ鹿島)

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