「死ぬのを待っているの?」原告の悲痛な叫び…水俣病訴訟の控訴審始まる 国などは「水俣病と診断した根拠の信用性に疑問」と主張 原告側は「水俣病の真実について的確な判断求める」

「死ぬのを待っているの?」原告の悲痛な叫びです。 手で押さえつけないと包丁で野菜も切れません。大阪府島本町に住む前田芳枝さん(75)。長年、手のふるえや、しびれなどいわゆる「慢性水俣病」の症状に苦しんできたといいます。 (前田芳枝さん)「片手だけだったらこんな状態になるので、両手で“ここならここ”というふうにしないと。ふるえを止めるためになるべく体に(腕を)くっつけて」 15歳の時に集団就職で大阪に来るまで、前田さんは鹿児島県阿久根市で生まれ育ちました。食事の中心は魚介類でした。 (前田芳枝さん)「魚を食べただけなんですよね。魚を食べただけなのに、こんな体になった。手だけじゃない。体全体がガクガクなんです。だから声を出すのもものすごくしんどいんです。力を入れてしゃべってるんです」 工場から排出される「メチル水銀」に魚介類が汚染され、それを多食した人々が発症した水俣病。2009年に成立した特措法で、一時金支給などの救済措置が設けられたものの、地域や年代の線引きにより申請を却下された人や、診断時期や情報不足などの理由で期限(2012年7月)までに申請できなかった人が多くいました。 前田さんも医療機関で水俣病と初めて診断されたのが、兄から誘われて検診を受けた2014年で、申請期限に間に合いませんでした。 前田さんをはじめ八代海一円に居住歴があり、手足のしびれや味覚障害など慢性水俣病の症状があるのに、特措法の救済から漏れた約130人は、国などを相手に公式の患者認定や賠償を求め2014年以降に順次提訴。 去年9月、大阪地裁は原告全員を水俣病に罹患していると認定し、国や熊本県などに賠償を命じる“原告全面勝訴”の判決を言い渡しました。 しかし、原告らの願いもむなしく国側は控訴したのです。 (前田芳枝さん)「本当に死ぬのを待っているの?高裁でこれからまた戦っていかないといけない、また何年かかるんですか?本当に見放されている、見殺しにされていると言っていいんじゃないかなって」 そして9月25日、大阪高裁で2審が始まりました。国などは「原告らが医療機関で水俣病と診断される根拠となった『共通診断書』の信用性は疑問がある」などとして1審判決は明白に誤りだと主張。 一方で原告側は、「画期的な1審判決に続いて水俣病の真実について、証拠と道理と法に基づき的確な判断を求める」などと反論しました。 次回の裁判は12月の予定です。

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