政府は、国の許可が必要なロケットや人工衛星の打ち上げの申請要件を大幅に緩和する方針を固めた。ロケットの種類や発射場などが同じならば、複数の打ち上げを一括して認める方向で検討する。衛星の打ち上げ受注獲得を巡る国際競争が激化する中、日本の競争力を高める狙いがあり、許可の仕組みを定めた宇宙活動法の改正を目指す。
衛星の観測データなどを使った宇宙ビジネスの拡大で、衛星を宇宙に届けるロケットの需要は急増している。内閣府によると、昨年の世界のロケット打ち上げ数は212回で、10年前の約2・8倍に増加した。
一方、日本は打ち上げ価格の面で競争力が弱く、国産主力ロケットの「H2A」や「H3」の打ち上げは年10回以下にとどまる。加えて宇宙活動法では、衛星を搭載したロケットを1回打ち上げる度に国の許可が必要で、衛星も1基ごとの申請を求めている。手続きに時間がかかるため、打ち上げを希望する事業者から簡素化を求める声が出ていた。
そこで政府は、国への申請要件を大幅に緩和する。具体的には、ロケットの種類や発射場などの条件が同じなら、複数回分の打ち上げの許可を1回の申請で認める方向で検討する。
衛星を巡っては、多数の小型衛星を群れのように連携させて一体運用する「衛星コンステレーション」の構築を各国が進めている。こうした需要も取り込むため、政府は衛星コンステを対象に、設計やデザインが同じ複数の衛星は同一の型式と認定し、1基ごとの申請は不要になるよう制度改正したい考えだ。
また、宇宙旅行ビジネスの市場拡大に備えた法改正も検討する。有人宇宙船の飛行を明確に規制する法律はないため、宇宙活動法で国が許可する新制度導入を考える。内閣府は、宇宙法の専門家らによる有識者会合で法改正の内容を詰め、来年以降の改正を目指す。
政府の宇宙基本計画は、2020年に4兆円だった日本の宇宙産業の市場規模を30年代早期に8兆円に倍増する目標を掲げる。内閣府幹部は「世界の流れに乗り遅れないよう日本の競争力を強化したい」と話す。
◆宇宙活動法=国の許可を得れば、企業がロケット開発や衛星の打ち上げを行えるよう、2018年11月に全面施行された。打ち上げや安全管理の方法のほか、失敗に備えた損害賠償制度なども規定している。