自民党「空騒ぎ総裁選」で最後に笑うのは誰か? 「政治に期待できない」空気感がより強まる懸念も

過去最多9人が立候補する自民党総裁選。テレビ番組や街頭演説などで連日論戦が行われている。これまでの報道によれば、国会議員票と党員票の合計から、元環境大臣の小泉進次郎氏、元防衛大臣の石破茂氏、経済安全保障担当大臣の高市早苗氏の3人が有力視されている。
【画像】過去最多9人が手を取り合い…自民党総裁選、候補者の顔ぶれ
とりわけ台風の目になっているのは、勝利すれば「史上最年少総理」となる小泉氏(43)だ。良くも悪くも一つひとつの発言や動静がマスメディアをにぎわせている。
わかりやすいのが、“小泉構文”“進次郎構文”とも呼ばれる「迷言」だろう。「今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけないと思っています」「リモートワークができてるおかげで、公務もリモートでできるものができたというのは、リモートワークのおかげですから」等々、独特の言い回しが特徴だ。
驚くことにそれがニューストピックとして取り上げられることも多い。大手新聞の中には、小泉氏の発言を言語学者に分析させている記事があるぐらいである。
人々の関心を集める大きな渦を作り出してしまっている
実のところ、このようなショーは、政治家を面白おかしく論評したり、嘲笑の対象にすること以上に、人々の関心を集める大きな渦を作り出してしまっている点が非常に重要である。
文学研究者で作家のジョナサン・ゴットシャルは、『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』(月谷真紀訳、東洋経済新報社)で、マスメディアがこぞって過熱する政治ドラマに便乗した結果、2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ氏を勝利に導いた側面があると論じた。
どのテレビ局も新聞も、トランプ氏を「進行中の政治ドラマの主役に仕立て、彼は毎日、毎時間のように新たな暴言を吐き、新たな展開をもたらして期待に応えた」という。「それはゆっくりと展開する文芸小説ではなかった。大どんでん返しのある無茶苦茶な筋書きの政治メロドラマだった」とし、トランプ氏の「大統領就任は、彼がナラティブ心理をハックし、彼を軽蔑する人々が圧倒的多数だった報道機関に数十億ドル分相当の宣伝を無料でやらせることができた結果だった」と述べた(同上)。
つまり、人々の「物語を語る動物」としてのポテンシャルが見事に活性化されたのである。トランプ氏は、退屈ではない「悪役(ヒール)になりきる」ことによって、ジャーナリストや報道機関がこぞって食い付く絶好のエサとなった。
懸念すべきは、空騒ぎ後の反動

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