過去最多9人が乱立した自民党総裁選は27日投開票。1回目の投票では誰も過半数を得られず、上位2人による決選投票は確実な情勢だ。事実上、次の総理を選ぶ最終対決を左右するのは結局、キングメーカー同士の恨みつらみと選挙に勝てる「顔」を求める保身のようで……。
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現状は石破茂元幹事長(67)、高市早苗経済安保相(63)、小泉進次郎元環境相(43)の三つどもえの争い。当初は断トツだった進次郎が伸び悩み、高市が党員・党友の支持を一気に広げている。進次郎急失速の理由は発言の軽さだ。奨学金返済の負担を巡る質問に「大学に行くのが全てではない」と答えるなど、トンチンカンな進次郎構文を連発。投開票まで持たず、早々にメッキがはがれた格好だ。
「立憲民主党の新代表に弁の立つ野田佳彦氏が選ばれたのもマイナス材料。野田さん相手では『論戦にもならない』とますます不安がられています」(自民党関係者)
正確性に定評のある日本テレビの情勢調査でも、進次郎は苦しい。党員・党友が対象の調査結果を368票の地方票に換算すると、石破121票、高市110票、進次郎54票。50票強の支持を集めた国会議員票を合わせても石破と高市に及ばない。よっぽど議員票を積み増さない限り、すでに進次郎は脱落ムードだ。
決選投票には石破と高市が残る公算は大だ。決選投票の地方票は各都道府県1票のみ。国会議員票の争いとなり、モノを言うのは「数の力」。旧態依然とした派閥単位の票の動きだ。議員票の勝負だと、石破は厳しい。読売新聞の議員動向調査で石破支持の議員は30人に届かず、派閥のボスからの嫌われ方もハンパない。
高市には「安倍派継承」が足かせに
「所属議員54人を抱え、党内唯一の派閥を率いる麻生副総裁は大の石破氏嫌い。首相時代に退陣を求められて以来、石破氏を忌み嫌っている。決選投票では一致団結し、派閥の力を見せつけたいようですが、石破氏への投票は考えにくい。進次郎氏の背後に控える菅元首相と二階派の武田良太元総務相とも犬猿の仲。石破氏と良好関係の菅氏の一存で、進次郎陣営が石破氏支持に回れば麻生氏は必ず高市氏に恩を売る。菅氏には絶対にキングメーカーの座を渡さないはずです」(別の自民党関係者)
議員30人超の支持を集める茂木敏充幹事長(68)とも石破は折り合いが悪く、40人程度の議員票をまとめた小林鷹之前経済安保相(49)も、前回総裁選では高市を支援した。あとは静観を決め込む岸田派頼みと石破は分の悪い状況だ。しかし「安倍路線の継承」を訴える高市に安倍派の大半が流れれば「高市新総裁誕生」の足かせとなる。
「安倍元首相と対立してきた石破さんに安倍派は乗るわけにいかないが、裏金事件の総本山である安倍派に支えられた総理・総裁が『選挙の顔』にふさわしいのか。高市さんは首相になっても靖国参拝を続ける意向を示すなど外交面も不安。あまりに右に寄り過ぎると、中道保守を掲げる立憲の野田新体制に票を奪われかねない。1回目の地方票で石破さんが圧倒すれば恩讐を超え、安定感を求めて多くの議員が雪崩を打つ可能性は十分にある」(ある自民党議員)
決選投票の行方はフタが開くまで分からない。