国土交通省四国運輸局は、10年前から実施していた外国人観光客数の統計調査を今年度から中止することを決めた。調査を依頼していた施設の一部が「見た目」で判断するなど、正確性に疑義が生じたためという。
調査は、四国4県の観光地や施設計60か所(1県あたり15か所)に、観光客数とそのうちの外国人の報告を求める形で実施。2023年度の外国人観光客は24か所で前年度比6倍超の52万9000人と公表していた。
この調査について、同局の河野順局長は今月20日の定例記者会見で、中止を表明。理由の一つとして、一部の施設が、外国人客かどうかを肌の色などの「見た目」で判断していたことを挙げた。
同局が集計方法を各施設に委ねていたためで、読売新聞の取材でも、複数の施設が「話している言語」などに加えて肌の色などの「見た目」で外国人客と判断していたと答えた。
宿泊関係の団体では、旅館業法に基づいてパスポートの提示を求めて正確に集計していたが、ある観光地の担当者は取材に「ツアー客は添乗員に確認しているが、個人客は見た目で判断していた」と説明。判断がつかないため、回答していない施設もあった。
また、調査対象の施設は年度によって異なっていたこともあり、河野局長は「正確性を欠き、統計調査として成立しない」と述べた。調査は同局独自で、国の統計などへの影響はないという。
外国人客数の調査では、日本政府観光局の訪日外国人旅行者数や観光庁のインバウンド消費動向調査は、入国審査時にパスポートを確認したり、調査員が直接尋ねたりしている。また、各自治体でも調査員が直接尋ねる形で実施している。
四国運輸局は過去の調査結果はホームページに掲載したままにしている。担当者は「今後取り扱いを検討する」としている。
大東文化大の渡辺雅之特任教授(多文化共生教育)は「見た目だけで外国人だと判断することは、調査として不正確であるだけでなく、思い込みや偏見による決めつけで相手を傷つける『マイクロアグレッション』に該当する。悪意がなくても差別につながりかねない」と指摘している。