文化審議会は18日、黄檗宗大本山の萬福寺(京都府宇治市)の本堂・大雄宝殿など3棟を国宝に、曹洞宗大本山総持寺の別院・総持寺祖院(石川県輪島市)など6件の計30棟を新たに重要文化財に指定するよう、文部科学相に答申した。
萬福寺は、17世紀半ばに中国から伝わった禅宗の一つである黄檗宗の大本山。指定の対象となった大雄宝殿、法堂、天王殿は江戸前期の建築で、アーチ形の天井や両開きと片開きを並べた扉など中国仏教建築の特徴を持つ。
総持寺祖院は、明治の大火で横浜市に移転した大本山総持寺の跡地に別院として再興された。元日の能登半島地震では複数の建物が倒壊。比較的被害が少なかった大祖堂や豪壮な二重門の山門など意匠の優れた16棟を指定対象とする。近世と近代の堂舎が並ぶ景観を現在に伝え、歴史的価値が高い。
同審議会は、多様ないけばなの様式を生み出し、伝統的な技法や美意識を伝える「華道」と、煎茶や玉露を手作業で作る伝統的な技「手揉み製茶」を登録無形文化財とすることも求めた。
その他の重要文化財の答申は次の通り。
▽旧村井家別邸(京都市)▽金剛峯寺(和歌山県高野町)▽同寺金堂及び根本大塔(同)▽瀬戸内海歴史民俗資料館(高松市)▽鞍埼灯台(宮崎県日南市)
総持寺祖院「住民とともに復興の道歩みたい」
重要文化財指定の答申を受け、総持寺祖院副監院の高島弘成さん(51)は「総持寺祖院は地元の人たちのよりどころであり、誇りでもある。貴重な建物を後世に守り伝えていきたい」と、思いを新たにする。
総持寺祖院は2007年の能登半島地震で被災し、13年以上かけて耐震補強を含む修理を実施した。答申では、07年の震災を乗り越えて境内の歴史的景観を現在に伝えていることなどが評価された。
ただ、元日に発生した地震の被害は大きく、山門から延びる回廊などが損壊した。「これまで積み上げてきたものが再び崩された思いだ。落胆は大きい」
9月には豪雨災害が能登半島を襲った。総持寺祖院に目立った被害はなかったが、能登の苦境は続く。高島さんは「寺は地域とともにある。住民の心の支えとなり、ともに復興の道を歩みたい」と話している。