「日本最大の社会教育関係団体」をうたう日本PTA全国協議会(日P)が、ずさんな運営を続けていることが明らかになった。内閣府による行政指導の約1週間後、日Pは下部組織の代表者らを集めた会議で対応を議論したが、運営改善に向けた足並みはそろっていない。内部からは「日Pの今後に大きく影響する、厳しい事態だ」との声が出ている。(児玉森生)
「内部調査や外部のチェックは進んでいるのか」「あるべき姿に戻すには、イメージをマイナスからゼロに戻さないといけない」
10月17日、東京都内で開かれた会議で、太田敬介・日P会長ら幹部に対し、下部組織の代表者から厳しい意見が上がった。内閣府は今回の行政指導で、運営体制の整備・強化策や、指摘された法令違反の再発防止策をまとめた報告書の提出を求めている。
関係者によると、会議では幹部側が「調査のため、第三者委員会の設置を決めた」と答えたが、そうした手順を踏むノウハウはない。幹部からは「第三者委の設置を内閣府に相談したが、『まずは報告要求に応じてほしい』との回答だった」と、苦しい説明があった。
内閣府による公益法人への立ち入り検査は年間400~500件実施されるが、報告要求に至るケースは少なく、1%程度だ。
日Pは2021年10月に受けた前回の立ち入り検査で、文書や印章の管理規定や経理のルールの見直しを促されたが、当時は報告書の提出までは求められなかったという。今回の行政指導は、前回の指摘が改善のないまま事実上放置されていたことも背景にあるとみられる。
PTAはピラミッド型の組織構造で、その頂点にある日Pは、国や関係機関に現場の課題や要望を伝える役割を担う。全国の保護者らが支払うPTA会費のうち、子ども1人あたり年10円が日Pに納付される。これが活動資金だが、22年度決算で約5000万円の赤字を計上した。昨年6月、その原因究明を宣言した当時の会長は「ハラスメントを含む不適切な言動」があったなどとして、翌月解職された。下部組織からも情報開示請求があったが、問題はうやむやにされたままだ。赤字は23年度も続いた。
さいたま市と千葉市のPTA組織は日Pの対応を「説明責任を果たしていない」などとし、今年6月までに退会。抗議する意図で会費の納付を保留する組織も出ている。PTAは学校単位でも共働き世帯の増加などで保護者の加入が減っており、下部組織にも「透明化した運営でなければ、参加を促すのも難しい」という事情がある。
7月には、日Pビルの外装改修工事の発注代金を水増しする手口で1200万円の損害を与えたとして、元参与(54)が背任容疑で埼玉県警に逮捕され、公判中だ。下部組織の不信に拍車がかかり、内閣府もこの工事の契約を「役員の関与が希薄で、義務を果たしたのか疑義がある」と指摘した。
日P理事の一人は10月末、下部組織などに宛てたメールで訴えた。「退会が続けば、会費の値上げが必要だが、信頼を損ねた状況下ではさらなる退会を誘発する。最悪の場合、解散も視野に入れないといけなくなる」