政府は、価値観を共有する国に防衛装備品の無償供与などを行う「政府安全保障能力強化支援(OSA)」について、今年度の対象国にフィリピンとインドネシア、モンゴル、ジブチを選定する方針を固めた。各国の実情に応じて、警戒監視や航空管制に用いるレーダーなどを供与する。
複数の日本政府関係者が明らかにした。総額約50億円相当になる見込みで、近く4か国と取り決めを交わす。
フィリピンは中国と南シナ海の領有権争いで対立を深めており、政府は海空での警戒監視に利用できる機材を供与する。フィリピンは昨年度も対象国に選ばれ、政府は沿岸監視レーダーの供与を決めている。日本は今年4月に日米比首脳会談を初めて開くなど、対中国を念頭に安保協力を強めている。
モンゴルには航空管制に関する機材を供与する方向だ。モンゴルは国境を接する中国とロシアにエネルギー資源で過度に依存することを防ぎ、日本など「第三の隣国」との関係を発展させることを重視している。
インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の名目国内総生産(GDP)の約3分の1を占める域内大国だ。日本は2015年12月、ASEAN加盟国との間で初となる外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を開くなど、関係強化を図っている。アフリカ東部にあるジブチは、自衛隊が海賊対処や邦人保護・輸送の拠点としている交通の要衝だ。両国には海洋安全保障に資する機材を供与する方向で検討しており、警備艇などが念頭にあるとみられる。
OSAは政府開発援助(ODA)と異なり、同志国の軍を直接支援できる枠組み。初のOSAとなる昨年度にはフィリピンやフィジーなど4か国に装備品供与を決めており、政府関係者は「相手国の軍との交流は格段に深化している」としている。