11月7日に兵庫県たつの市の女児刺傷事件(たつの事件、2006年)の殺人未遂容疑で逮捕された勝田州彦容疑者(45)が、同月27日、兵庫県加古川市で小学2年の女児(7=当時)が刺殺された事件(加古川事件、2007年)についての殺人容疑で再逮捕された。同容疑者と3年にわたり手紙のやり取りをしてきた高橋ユキ氏(ノンフィクションライター)がレポートする。
* * * 勝田容疑者は、岡山県津山市で2004年に起きた女児殺害事件で無期懲役の判決を受け、服役中であったが、たつの事件の逮捕前、同事件と加古川事件の犯行を認める手紙を筆者に送っていた。さらに逮捕後、筆者は弁護士を通じて勝田容疑者の新たな肉声を得た。そこで彼は、具体的な“犯行手口”を語っていたのである。
これまでの事件について勝田容疑者は、こんな“工夫”をしていたという。
「怪しまれないように、ずっとケータイをいじりながら、一般人のフリをして歩いてみたり、犯行後には『着替え』を用意して同一人物と思われないように変装をしています」
さらにたつの事件では、犯行に先立ち、学習塾前で好みの女児を物色していたというが、「やはり、かなり目立っていたそうです。目撃証言がたくさんあったそうです」と、人目についていたことも明かしている。
彼は本来、白いブラウスを着た女児をターゲットにする。たつの事件でも当初は、白いブラウスの女児に狙いを定めていたが、別の女児を襲ったのだという。それは“親の小言”が理由だった。
「勝田家では、夕食は両親と私、3人が揃って食事を摂ることが決まっていて、少しでも遅くなると、かなり小言を両方から言われます」
事件当日も夕食に間に合うよう、急いでいたと語る。
「成人してからも変わらず小言を言われ続けてきました。主に私の母が小言を言ってきます」
「真人間になろうと誓った」
当時20代だった容疑者を厳しく監視していたのはなぜだったのか。すでに亡くなっている両親の思いを、今は知ることはできないが、かつての容疑者を知る同級生に接触した。幼稚園から中学校まで同じだったというAさんは幼い頃の勝田容疑者を「承認欲求の塊でした」と振り返る。
「『認められたい、褒められたい』という感情をグイグイ前に出すタイプで、授業中の発表でも、本を読んで覚えたような難しい言葉を使ってみたり、偉そうに物を言ったりと、煙たがられるタイプでした」(Aさん、以下同)
また「思い出すことのひとつに、難しい言葉を使いたがるところがあった」と、小学生時代の道徳授業での一幕を語ってくれた。
その授業の日は“母親と交わしたお手伝いの約束をすっぽかして遊びに行った少年が帰宅すると、自分がやるべきだったお手伝いを母親が全てやってしまっていた”というテーマで話し合いが行なわれていた。
先生が「この時少年はどう思ったか」と教室で問いかけた時、手を挙げたのが勝田容疑者だったという。彼は「良いこと言って良いですか?」と前置きしたうえで「少年は反省し、真人間になろうと誓ったと思います」と発表したのだそうだ。
「『真人間になる』なんて、大きな罪を犯した人間が立ち直るために使う言葉ですが、彼が今『真人間』になろうとして犯罪を自供したのなら、彼を応援したいです」(Aさん)
再逮捕後、勝田容疑者は黙秘している。
※週刊ポスト2024年12月20日号