会社社長が住む大阪市のマンション共用部に侵入したとして匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の指示役とみられる男らが逮捕された事件で、闇バイトで集められた実行役が「狙うのは詐欺師だと聞いた」と供述していることが6日、捜査関係者への取材で分かった。
大阪府警は指示役の住所・職業不詳、今井裕治(ゆうじ)被告(37)=邸宅侵入罪で起訴=が、実行役の罪悪感を軽くするための情報を伝えていたとみている。
今井被告のスマートフォンからは複数人の身分証の画像が見つかり、府警は闇バイトの応募者とみて実態解明を進める。
府警によると、逮捕されたのは今井被告の他、車両準備役の会社役員、前川智一(40)=広島市南区=と、実行役のとび職、島宏至(ひろし)(21)=同=の両被告。
捜査関係者によると、島被告は交流サイト(SNS)を通じて闇バイトに応募。「個人情報を渡しているので、家族への報復を恐れて犯行するしかなかった」などと供述している。犯行に当たっては「相手は詐欺師」などと伝えられていたという。失敗すると報酬は支払われず、別の仕事を回されたり、罰金を払うよう要求されたりした、とも話している。
今井被告はリクルーター役にSNSのX(旧ツイッター)で闇バイトの募集を行わせていた。やりとりには秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」を使用していた。府警が今井被告のスマートフォンを解析したところ、闇バイト応募者とみられる男性6人分の免許証やパスポート、保険証などの画像が見つかった。6人は山形、千葉、東京、大阪、神戸、福岡に住む20~30代の男性で、府警は全員の無事を確認し、情報収集を進めている。
一方、前川被告は暗号資産(仮想通貨)の取引や仲介を手がける会社の役員で、今井被告とは十年来の付き合いがあった。マンション侵入事件のあった今年4月以前にも、島被告に大阪市内のホテル喫茶店で現金取引があるとして、会社社長の服装の特徴を伝え「現金をひったくれ」と指示していたという。
会社社長宅には侵入事件が起きた数日前の留守中に2人組の男が侵入。現金など1400万円相当が盗まれており、府警は今井被告らの関与について調べている。
ドアにガードプレート有効 マンションにも侵入相次ぐ
首都圏をはじめ、全国で相次ぐ強盗事件では、一戸建て住宅だけでなくマンションも標的になっている。大阪府警が摘発した今回の事件では、オートロックがないマンション一室の玄関扉が、バールでこじ開けられそうになっていた。
防犯アドバイザーの京師美佳さん(53)は被害防止のポイントとして、音▽光▽人の目▽時間(がかかると思わせる)-の4点を意識することが重要だと指摘する。例えば人感センサーライトや防犯カメラの他、踏むと音が出る「防犯砂利」、ガラスが破壊されたときに鳴るアラームも有効としている。
また玄関ドアのこじ開け防止のためにドアと壁との隙間を埋めるガードプレートの設置を推奨。京師さんは「いずれの防犯グッズもホームセンターで購入できるので対策を進めてほしい」と話す。
事件多発を受け、防犯グッズの売れ行きは全国的に伸びている。コーナン商事(大阪市淀川区)によると、10~11月は、各店舗で防犯カメラや補助錠、窓ガラス飛散防止シートなどの売り上げが前年同時期と比べ約1・5倍~3倍に増えた。一部の店舗では欠品状態になっていたという。
警察「勇気もって相談を」
闇バイトを通じ、安易に強盗などの重大犯罪に加わる若者が後を絶たない。警察庁は公式X(旧ツイッター)に動画を公開し、闇バイトに関する相談を受ければ、家族も含め保護すると呼びかけており、11月末までに全国の警察が保護したケースは応募者や家族も含めて125件に上る。
大阪府警によると、闇バイトの応募者から相談を受けた場合は、状況に応じて本人や家族を一時的にホテルや自宅以外の場所に避難させたり、自宅周辺のパトロールを強化したりする保護措置を取るという。
最近では闇バイトで関東から大阪に来たという若者を電話相談をきっかけに保護したケースも。捜査幹部は「応募してしまっても絶対に犯罪に加担せず、勇気をもって相談してほしい」と話している。