〈「森元首相に土下座して2000万円」報道〉下村博文元文科相は名誉毀損の訴えを密かに取り下げていた!《衆院選落選後》

〈 「下村君がマスコミに持ち込んだという話もある」森元首相が重大証言《自民党裏金問題》 〉から続く
「2つ入っています。2000万あります」
自民党の下村博文元文科相が、文藝春秋とノンフィクション作家・森功氏に名誉を毀損されたと主張していた民事訴訟を取り下げた。11月22日付で、下村氏が東京地裁に対して「訴えの取下書」を提出し、地裁から文藝春秋の代理人に連絡が入った。
下村氏が名誉を毀損されたと訴えたのは、「文藝春秋」2023年11月号に掲載した「 森喜朗元首相へ献上された疑惑の紙袋」 。
森功氏はこの記事で、自民党安倍派(清和政策研究会)の会長代理だった下村氏が、2023年7月6日に東京・赤坂にある森喜朗元首相のプライベートオフィスを訪ねた際の様子を詳報。取材によれば、下村氏は森元首相に土下座をした上で、安倍派の会長に就任するために、薄茶色の紙袋を手渡そうとした。森功氏は、その場面を次のように描いている。
〈「2つ入っています。2000万あります」
森の怒気は呆気に変わった。
「君は、何というバカなことをするんだ。清和会の会長を2000万円というそれだけの金額で買えるとでも思っているのかね。もう帰ってくれ。これ以上ここにいたら、俺はこのことを人に言うぞ。おい、お帰りだ」〉
結局、下村氏は紙袋を持ち帰り、会長就任は叶わなかった。
下村氏は同年10月17日の会見で、記事の内容を「事実無根」と否定。名誉を毀損されたとして、森功氏と文藝春秋を相手取り、慰謝料など1100万円の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。
「立ち上がった下村君はモゾモゾしながら……」
ところが、その後、「文藝春秋」2024年6月号及び「 文藝春秋 電子版 」では、森功氏が約240分にわたって森元首相にインタビューした「 森喜朗元首相『裏金問題』真相を語る 」を掲載。森元首相はこの記事の中で、次のように語っている。
〈立ち上がった下村君はモゾモゾしながら、脇に置いていた紙の袋を私の目の前に差し出しました。
「とにかくご無礼もお許しいただいて、これはわずかですが」
驚きました。
「わずかというのは何だ」
私はもはや怒りを抑えることができませんでした。
「俺はお前を決定的に嫌いになったよ。場合によっては、総理大臣になる資格を持つ清和会の会長を金で買おうとは何事だ。いくら入っているのか知らんが、これぐらいの金で総裁の地位を手に入れられると思っているのか」
一喝したら、下村君はますます滑稽なことを言いました。
「いや、2つ入ってます」
紙袋の大きさからすると、中身は200万円ではなく、2000万円。だから、「俺は許さん。持って帰れ」と突き返したんです。ただし彼のことだから、あとで何を言い出すかわからん。なので、このやりとりは秘書に証人になってもらいました。
「下村さんがこんなものを持ってきたけど、俺は受け取らないから、君から返しなさい」〉
つまり、当事者の一方である森元首相が事実関係を完全に認めたのだが、それでも下村氏は訴訟を継続していた。
「原告は訴えを全部取り下げます」
ところが、下村氏は10月27日の衆院選で落選すると、11月22日になって「訴えの取下書」を提出。取下書には、代理人である熊谷信太郎弁護士ら3名の記名・押印に加え、こう記されている。
〈頭書事件について、原告は、訴えを全部取り下げます〉
提訴した際には記者会見を開き、小誌記事を事実無根と訴えていた下村氏。今後、どのように説明責任を果たすのか、注目が集まる。
森功氏は、下村氏が訴えを取り下げた事実について、「 文藝春秋 電子版 」及び「文藝春秋」2025年1月号に掲載された記事「 重大証言 安倍派を壊した男たち 」で言及している。
同記事では、安倍派5人衆の一人だった世耕弘成衆議院議員や、稲田朋美元防衛相、鈴木英敬衆院議員、塩崎彰久衆院議員ら有力議員にもインタビューを実施。西村康稔元経済産業相が、西田昌司参院議員から安倍派がキックバックを継続した理由について問い詰められた際、「(ある議員から)泣きつかれてやむなくやった」と説明していたことについても詳報している。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年1月号)

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