山口県岩国市の国立病院機構岩国医療センターが2021年4月から今年9月まで、リハビリ時間を水増しするなどして診療報酬計約7000万円を不正に請求していたことがわかった。請求は約2万3600件(患者約6000人分)に上り、センターは患者や健康保険組合などに返還する方針。
センターでは、脳卒中で半身まひの後遺症が残った患者らに対し、理学療法士ら職員がリハビリ診療を担当する。センターによると、不正請求の情報は9月に寄せられ、国立病院機構(本部・東京)が内部調査を実施。職員がリハビリにかかった時間を入力するコンピューターの記録などを調べた。
診療報酬の請求では、原則20分を1単位とする。調査の結果、リハビリを終了したとする時刻が、コンピューターへの入力時刻よりも後になるなど矛盾していたことが判明。実際にかかった時間が20分未満でも20分とするなどしていた。またリハビリ中、別の患者の電子カルテをコンピューターで見ていた職員らもいて、業務を片手間で行っていたケースもみられた。同機構は、業務怠慢分も不正請求と認めている。
同機構が職員らに聞き取りしたところ、開始と終了の時刻を確認せずに漫然と入力していたという回答が多かった。一方、一部の職員は「1日15単位」とするセンターの目標をノルマと受け止め、達成するために水増ししていたと答えたという。
不正発覚を受けてセンターは、入力したデータを第三者が定期的に点検し、再発防止に努める。また、同機構は全国で運営する計約140の医療機関について、リハビリの診療報酬の請求が要件を満たしているかの調査を行う。今回の不正請求に関与した職員らの処分も検討している。
センターの田中屋宏爾院長は「患者、家族、関係者に大変な心配と迷惑をおかけし、心よりおわび申し上げる。信頼を取り戻せるよう努力する」としている。