「人も水も足りなかった」 大船渡山林火災に派遣の援助隊員

岩手県大船渡市で発生した山林火災は、平成以降で国内最大規模となった。消火のため、各地から緊急消防援助隊が駆けつけ、群馬県内からは全11消防局・本部の96隊372人が派遣された。県の第1次援助隊を大隊長として指揮した前橋市消防局の酒井聡消防司令長(53)が7日、取材に応じ、「指示を受けて隊を送っても、次々と新たな消火の指示が来る。考えられない規模で、人も水も足りなかった」と振り返った。【田所柳子】
火災は2月26日に発生し、7日午後1時までに約2900ヘクタールが焼けた。群馬からの援助隊が千葉、東京、埼玉などと共に担当したのは同市三陸町綾里。漁港や駅、小学校があり、普段はにぎわう街中だが、全域の避難指示によって人の姿はない。夜は一帯が停電し、火災以外の明かりが全くない異様な光景だったという。
通常の火災と異なり、住民がいないため、燃えている建物や場所の情報が少なく、特定がしにくい。木のボヤと見込んで現場に到着すると、住宅が炎を上げて燃えていた。山中の林道に消防車5台程度を出動させた時は、山の上からも下からも火の手が迫り、隊員の命を守るため、極めて異例の緊急退避をせざるを得なかった。「林道を進んだ先でも火災があり、泣く泣く決断した」という。
隊員は8時間活動しては8時間休憩する。しかし、休憩中も次の活動の準備などに追われていた。常に火の粉と灰、こげるにおいが漂っていたという。
第1次援助隊のメンバーで前橋市消防局の関真吾消防士長(37)は「山々からすごい規模の線状の炎が下りてくる。見たことのない景色で、火に慣れているはずなのに恐怖すら感じた。通常は『この火災規模なら、これだけ出動すれば鎮火する』とわかるが、山丸ごとなので人間は劣勢。自然にはかなわなかった」と語った。酒井さんも「通常の数百倍の規模なのに、消火栓も防火水槽も使えず、絶えず消火の効率に気を配った」という。
第3次援助隊125人は9日まで活動する予定。要望があれば第4次援助隊を派遣する。

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