企業・団体献金の見直しを巡り、立憲民主党と日本維新の会は「原則禁止」の実現で共同戦線を張り、各党に協力を呼びかけている。制度存続に全力を注ぐ自民党を孤立させる戦略だが、国民民主、公明両党は独自の主張を展開し、包囲網は広がりを欠いている。(重松浩一郎、田村直広)
「野党がまとまれば、企業・団体献金を禁止できる。一本化した場合、国民民主にも野党案への賛同を切にお願いしたい」
立民の落合貴之氏は12日の衆院政治改革特別委員会の自由討議で、こう国民民主に秋波を送った。立民、維新など、禁止を訴える各野党に、現時点では中立的な立場を取る国民民主が加われば、特別委の過半数を確保できるためだ。
立民と維新の距離は縮まっている。昨年12月、立民は参政、社民両党などと提出した政治資金規正法改正案では、禁止対象から政治団体を除いた。労働組合や業界団体が作る政治団体からの献金は引き続き可能で、提出当時、維新は「労組からの寄付を受けるための抜け穴だ」と批判した。
だが、維新は今月11日に提出した法案では立民との協調を重視し、政治団体からの寄付を例外扱いにした。維新の池下卓氏はこの日の討議で、「憲法違反の懸念があり、政策をゆがめる程度の献金は防ぐようにした」と、全面禁止に踏み切らなかった理由を説明した。
維新案は、政治団体からの寄付に関し、総額年1000万円とする上限を設けた。業界団体系の政治団体は数億円単位で主要政党に寄付している例も多い。維新の青柳政調会長は討議で「廃止と同義だ」と説明した。立民内には「厳しすぎて、選挙運動がままならない」(幹部)との抵抗感もあるが、今後の修正協議で維新と上限額の一致点を探る構えだ。
一方、国民民主は禁止に慎重な姿勢を崩していない。国民民主の長友慎治氏は立民の呼びかけに対し、「与党も含めて(適正化に向けた)実効性を担保する方向性での議論をしたい」と突き放した。
自民は存続に向けた主張を強めている。小泉進次郎氏は討議で「禁止すれば、本当に日本政治の活力を高めることになるのか」と疑問を呈した。公明が自民に配慮し、存続させた上で規制を強化する立場に回っていることも強気を後押ししているとみられる。
もっとも、仮に野党案が一本化し、衆院を通過しても、自公が過半数を握る参院で否決されるのは確実だ。与野党は3月末までに結論を出すことで合意しているが、国民民主の福田玄氏は「自民と野党の立ち位置が両極端だ。残された2週間で結論を得られるのか」と不安を漏らした。
今後は、4月以降に協議を継続させるかどうかも、与野党の議論で焦点になりそうだ。