「私に創造主である神が降臨している」――。女はそう繰り返して、男女の“信奉者”を集めていたという。
男性2人をそそのかして入水自殺させたとして、大阪府警は3月11日、大阪府河内長野市に住む自称「占い師」の女、濱田淑恵(よしえ)容疑者(62)を自殺教唆などの容疑で逮捕した。
彼女は10年以上前から「スピリチュアルカウンセラー」と名乗り、悩み相談を受け付けてきた。そこで信奉者、いわゆる“信者”を獲得。信者である滝谷奈織(なぽり)容疑者(59)と共謀して、寺本浩平さん(当時66)と米田一郎さん(当時51)の男性2人を死に追い込んだ。更に、同じく信者である寺﨑佐和子容疑者(47)と共謀し、寺本さんの遺書を偽造したとの容疑だ。つまり二人の女性信者を使い、犯行に及んだのだ。
被害者も精神的に支配された“信者”だったとみられており、それだけに事件の内容は特殊だ。
「2020年8月、男性2人を、和歌山県広川町の海に入らせた。『命を捨ててプログラムを取り除く』『気が変わったら沈め合うこと』などと、異様な理屈を信じこませ、自ら死なせたものです」(社会部記者)
和歌山の海に「ぷかぷか浮いておったぞ」
遺体発見当初は「事件性なし」とみられていたが、発覚の契機となった別の事件がある。それが同年10月以降に起きた別の当時40代男性への恐喝事件である。濱田容疑者はこの恐喝事件において、男性2人に対する自殺教唆への関与をチラつかせて脅し、金を奪ったのだ。この恐喝事件について濱田容疑者は、自殺教唆での逮捕と同日の今年3月11日に起訴されている。
この恐喝事件からは濱田容疑者のスピリチュアルすぎる手口が見て取れるのだ。
この事件でターゲットとなったのは濱田容疑者の「占い」を受けた当時40代の男性。この男性から金を取ろうとした濱田被告は、まず和歌山県の海中で亡くなった上記2人の被害者に言及し、次のように脅した。
「お前はカネに執着している。お前と両親の全財産を、一旦私にささげろ」
「決して逃げるべからず。逃げたらどうなるか分かってるな。あの2人、ぷかぷか浮いておったぞ」
つまり、逃げれば、同じように死に追いやるという意味だ。
更に「私を愚弄したやつ、とことん追い回しとんねん」「絶対、私を怒らせないこと」と迫り、後日電話でも「有り金を集計して金額を報告して、私に渡すこと」「2000万円と今持っている現金を持ってくるように」と執拗にカネを要求。結局、2300万円を持参させて脅し取った。
「両親の命も、私が造った」「どうにでもできる」
ここから、さらに常軌を逸した言動を見せる。翌11月にも、「カネはあるんだろう。全部報告した上で持ってこいと言ったよな。あと2000万あるよな」と要求。また、次のようにも口走ったという。
「魂の親よりも、肉体の親をかばうのか。両親の命も、私が造ったんだ。私は両親の命だって、どうにでもできるんだよ。でも、殺すまではしない」
「お前、逃げるなよ。私から逃げたら、両親の命も、私が造ったんだから、どうにでもできるんだよ」
まさに“創造主”として強弁した上で、被害者を恐怖に陥らせたのである。
翌21年にも「自宅マンションを早く引き払って、売却する手続きを進めろ」「両親がどうなってもいいのか」としつこく金銭を求めた。要求は続き、こうして23年までに総額8000万円もの金銭をひとりの男性から脅し取っていたのだ。
「調べでは、自殺教唆によって亡くなった被害者の不動産も、死後、濱田容疑者の親族名義に書き換えられていたことが分かっています」(捜査関係者)
脅し文句こそスピリチュアルだが、「カネに執着」していたのは占い師本人ではないか。
外の世界から閉ざされた、“教祖”と“信者”の間で起きた事件。当局は真相究明を進めている。
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(「週刊文春」編集部/週刊文春)