寝屋川ショックで動揺が走る
大阪府教育庁が3月上旬に発表した「府内公立高校入試一般選抜」の最終出願状況によると、2025年度の公立128校の平均倍率は1.02倍でした。これは現行制度となる2016年度以降過去最低になります。
偏差値62~69程度である難関公立校も、寝屋川高校0.94倍、八尾高校0.99倍、鳳高校0.94倍と定員割れになっており、特に偏差値69の寝屋川高校の定員割れはネット上で大きな話題になりました。
なぜこんなことが起きたのか。これには、私立高校実質無償化が背景にあると言われています。
私立高校実質無償化とは、全国的に行われている、子育て世帯に対する支援金制度の拡充のことです。現在政府は、授業料の一部を助成する就学支援金制度を実施しています。高校に通う子どもがいる家庭に対して、世帯年収に応じた就学支援金の支給が行われているのです。
その中でも大阪府は、国の就学支援金と府独自の「授業料支援補助金」を支給することで、ほかの都道府県よりも支援が手厚いことで知られています。
2024年度以前でも、世帯年収が590万円未満の世帯では無償、590万円以上910万円未満の世帯では保護者負担の軽減がありましたが、2026年度からは年収に関係なく、大阪府民ならば完全に授業料の負担がなくなることになります。
私立志向の高まりもあり、大阪府内の公立高校の倍率が大きく下がり、私立高校に生徒が流れる結果になりました。その結果、「寝屋川ショック」が発生したわけですね。
しかし、大阪府内のすべての府立高校が倍率を下げたわけではありません。府立高校の中でも、入試倍率を維持した学校もあります。
今回は、その1つである吹田東高校の東 知佐子校長にお話を伺いました。吹田東高校は、今年の入試倍率1.31倍で、府内の普通科高校の倍率では第4位でした。
「私立無償化」の影響は続く
―――昨今は私立高校無償化の流れがあり、大阪府内のほかの学校は軒並み倍率を下げている中、吹田東高校は1.31倍という数字をどのように受け止めていらっしゃいますか?
素直に喜べない、というのが正直な感想です。吹田東は一昨年、近年では最高の倍率(1.43倍)を記録しました。しかし昨年は、私立無償化の影響もあってか、1.09倍となりました。
この1.09倍という倍率でも、ありがたいということは頭ではわかっています。ただ、このときは、正直ショックが大きかったです。それまで積み上げてきたものや、頑張ってきた教育の中身だけでは公立高校は選ばれなくなるのではないかと。本校を受けに来てくれた生徒たちの顔を見たら、そのショックは和らぎましたが。