宮中晩さん会で初の和食 両陛下が提案、「令和流」のおもてなし

国賓として来日したブラジルのルラ大統領夫妻を歓迎する天皇、皇后両陛下主催の宮中晩さん会が25日、皇居・宮殿で開かれた。
皇居・宮殿に国賓を招く宮中晩さん会では明治以来、フランス料理のフルコースが提供されてきたが、今回のブラジルのルラ大統領夫妻を招いた晩さん会では、天皇、皇后両陛下の提案で初めて和食がメニューに加えられた。また、出席者同士の会話が弾むよう、料理の出し方を変えるなど「令和流」のもてなしも見られた。
海外との交流が本格化した明治時代、欧州の王室などから賓客が頻繁に訪れるようになった。明治新政府は欧米の文化を積極的に取り入れており、皇室が海外の賓客をもてなす晩さん会にはフランス料理が採用された。昭和や平成の時代もフランス料理が中心で、令和初の国賓となった2019年5月のトランプ米大統領夫妻の晩さん会でも牛ステーキをメインとしたフランス料理のフルコースが出された。
令和に入って2度目となった今回は、これまで最初のメニューだったコンソメスープの前に和食の前菜が配膳された。また、従来は置かれていなかった箸がナイフやフォーク、スプーンとともに並べられた。
宮中晩さん会で和食が出されるのは初めてだが、賓客を招いた昼食会では、23年11月から始まっている。
新型コロナウイルス感染症の影響で取りやめが続いていた昼食会が再開したのは、23年11月17日にキルギスのサディル・ジャパロフ大統領夫妻が皇居を訪れた時で、手まりずしなど和食の前菜が初めて加わった。そのきっかけを宮内庁幹部は「両陛下から和食が世界的にも認知され、評価されており、キルギス大統領夫妻との昼食会で和食を提供してはいかがかとの話があった」と明かす。
キルギスはイスラム教徒が多く、乾杯は通常のシャンパンではなくリンゴジュースだったが、11月28日に開かれたベトナムの国家主席夫妻との昼食会では和食の前菜に合わせ、初めて日本酒で乾杯した。酒器は宮内庁が両陛下と相談して新たに購入した江戸切子の冷酒杯が使われた。
ブラジル大統領夫妻の宮中晩さん会では、乾杯はシャンパンになったが、テーブルにはワイングラスなどとともに江戸切子の冷酒杯が置かれ、前菜に合わせて日本酒が注がれる。
料理の出し方も今回から変わった。従来の大皿に盛った料理を職員らが出席者のもとに運び、好きな分だけ自身の皿に取ってもらう方式から、出席者の会話を妨げないようにするため、各自の皿に盛り付けた状態で運ぶようになった。この方法は、23年11月のキルギス大統領夫妻との昼食会から採用している。【高島博之】
宮中晩さん会のメニュー
<料理>
・和食前菜
棒ずし(スモークサーモン・マダイ・エビ)
カニきぬた巻き(梅肉ソース)
隠元湯葉巻き揚げ
豆腐の西京漬け
芝エビと青アスパラガスのクルミあえこごみ添え
ホタテ貝と紅白なます
3色団子(カニ・ホタテ貝・青のり)
サツマイモ蜜煮・ソラマメ蜜煮・花弁ゆりね
・野菜の入ったコンソメスープ
・羊のもも肉の蒸し焼き
・果物、レモンゼリー
<飲み物>
食前
・ドライシェリー(サンデマン・ミディアム・ドライ)
・トマトジュース
・フレッシュオレンジジュース
卓上
・シャンパン(ドン・ペリニヨン2004)
・日本酒
・白ワイン(コルトン・シャルル・マーニュ2001)
・赤ワイン(シャトー・オー・ブリオン1996)
食後
・コーヒー
・コニャック(ヘネシー・エクストラ)
・リキュール(コアントロー、ペパーミント)
・ウイスキー(バランタイン30年)

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