同性婚を認めない民法や戸籍法の諸規定は憲法違反だとして、愛知、京都、香川の3府県のカップル3組6人が国に1人当たり100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。本多久美子裁判長は規定を合憲とした1審大阪地裁判決とは異なり、規定は「法の下の平等」を定めた憲法14条1項と「個人の尊厳」を定める憲法24条2項に反し「違憲」だと判断した。賠償請求は退けた。
全国5地裁の計6件の同種訴訟で、2審判決は5件目。1審では大阪地裁のみが規定を合憲としたが、2審では札幌、東京、福岡、名古屋に続き、いずれの高裁も違憲判断を下したことになり、国が対応を迫られるのは必至の状況だ。
判決理由で本多裁判長はまず、「両性の合意のみに基づいて成立する」と憲法が定める婚姻は、制定時には異性婚を前提にしていたが、憲法の理念を踏まえると同性婚を排除したわけではないと判断。制度のあり方は社会状況を踏まえて決められるべきだとした。
その上で、婚姻制度は社会生活のさまざまな場面で当事者に法的利益を与えるもので、同性カップルがそれを享受できないことは「個人の尊厳を著しく損なう」と指摘。現規定は性的指向による「不合理な差別」にあたり「法の下の平等の原則に反する」と判断した。
一方、最高裁の統一判断が示されていないことなどから、国の賠償責任までは認めなかった。
令和4年の1審大阪地裁判決は、性的指向による「区別取り扱い」にあたると指摘したものの、訴訟時点では議論が尽くされていないことなどから、規定自体が憲法に「ただちに違反するとは認められない」と判断していた。
■パートナーシップ制度「新たな差別生む」と指摘
同性婚を認めない現在の婚姻制度を「違憲」とした25日の大阪高裁判決。「やっと声が届いた」。原告らは判決の言い渡しをうなずきながら聞き、閉廷後には互いに抱き合って喜んだ。
4年の大阪地裁判決が同種訴訟で唯一「合憲」とした根拠の一つは、自治体によるパートナーシップ制度など類似する制度の存在だった。
地裁判決はこうした制度によって同性カップルと異性カップルが受けられる利益の差がすでに相当程度解消され、個別の立法でさらに緩和が可能だとした。
しかし、高裁判決はこうした制度の広がりが同性婚を受け入れる国民意識の醸成の表れとはした一方、「同性カップルについてのみ婚姻とは別の制度を設けることは、新たな差別を生み出すとの危惧がぬぐえない」と指摘。別制度の存在は、違憲判断を回避する理由にはならないとした。
弁護団によると、別制度についてのこの判断は、これまでの高裁判決にはなかった踏み込んだものだという。原告の坂田麻智さん(46)は判決後の会見で「同性カップルを区別する別制度はいらない。(婚姻という)同じ制度を使えるよう一刻も早く国に立法してほしい」と訴えた。