石破茂・首相が「10万円商品券」問題で窮地のなか、林芳正・官房長官の足元でも「10万円疑惑」が持ち上がった。
「事務所に呼ばれて『これからは協力してください。これは取っておいてください』と茶封筒を渡されたんです。帰ってから開けてみると10万円が入っていました。知人を呼んで証拠になる記録を残し、本人に返しました」
本誌・週刊ポストにそう証言するのは山口県萩市の元市議会議長・青木賢次氏だ。10万円を渡したのは地元・山口3区の林派の実力者で、現在は自民党山口県連会長の新谷和彦・元県議だったという。
山口3区は河村建夫・元官房長官の地盤だったが、2021年総選挙で林氏が参院から鞍替え出馬し、河村氏が引退に追い込まれたため、現在も林派と反・林派(河村派)の対立が続く。3月16日の萩市長選では林氏が強力に支援した元市長を破り、河村氏の実弟の田中文夫・現市長が僅差で当選した。
証言者の青木氏は反・林派市議のまとめ役的存在だ。10万円を渡されたのは2023年4月10日で、新谷氏が県議を引退した直後。新谷氏は当時、自民党萩支部長だった。
「次の市長選に向けて動いているんだとピンときた。萩支部は現職優先で(河村派の)田中市長を推す方針だが、支部長の新谷は林派だから前回市長選も元市長を応援した。だから、今後は自分に協力して林派の言うことを聞けということでした」
青木氏は10万円を反・林派の切り崩し工作のための資金だったと受け止めている。青木氏が10万円を返却した後、新谷氏は市長選前に自民党萩支部の役員から反・林派を一掃した。新谷氏は青木氏の告発にどう答えるか。
──青木氏は2023年4月10日にあなたから10万円入りの茶封筒を渡されたと証言している。
「ちょっと覚えていないな。知らない」
──萩支部の人事をしたのは市長選のためか。
「いつまでも萩の自民党に河村支持派が集っているんじゃしょうがないということで、総会を開いたわけですよ」
反対派切り崩しが林氏の指示かについて改めて問うたが、締め切りまでに回答はなかった。
林氏に、この林派の県連会長の10万円工作疑惑をどう受け止めているのか聞くと、「ご指摘の事実につきましては、把握しておりません」(事務所回答)とした。
自民党では地方でも“10万円の札束”が飛び交っているようだ。
※週刊ポスト2025年4月11日号