政府中央防災会議の有識者会議が31日公表した南海トラフ地震の新たな被害想定では、想定震源域の全体がずれ動いた「全割れ」とは別に、紀伊半島付近で東西に分割して起きる「半割れ」のケースも初めて試算された。南海トラフ地震は震源域が多様で、過去には東海や東南海、南海地震などと分かれて発生し、今後も一部だけがずれ動く可能性は十分にある。
半割れケースで想定された地震の最大級の規模は、東側がマグニチュード(M)8・7、西側はM9・0と算出。いずれも南海トラフで史上最大だった宝永地震(M8・6)を上回る規模だが、算出に関わった有識者メンバーの一人は「最大級に備えれば、さまざまなケースの地震に対応できる」と指摘する。
半割れの最大の被害想定は、東側の場合が死者約7万3000人、全壊および焼失棟数は約123万8000棟。西側は死者約10万3000人、全壊および焼失棟数は約96万8000棟とする。
一方、東西のうち片方で半割れが起きてから数日ほどで、もう片方でも半割れが起きた場合の被害も想定。昨年8月に初めて発表された南海トラフ地震臨時情報で住民の避難が徹底されるなどの前提で津波死者数は西側が後発した場合は約700人、東側では約10人まで激減するとしている。
もっとも、先発地震で臨時情報が出され、避難が促されるなどする1週間以内に後発地震が起きるとは限らない。過去には数年後に起きた事例もあり、高い防災意識をどこまで維持できるかは死者数を左右する。後発地震を念頭に置いた防災対策に加え、救助や復旧活動などの安全確保も必要となる。(小野晋史)