iPS細胞から「心筋細胞」のシート、医療用製品の承認申請は世界初か…大阪大発の企業

iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心臓の筋肉(心筋)の細胞シートを作って心臓病の患者に移植する治療法について、大阪大発の新興企業「クオリプス」(東京)は8日、細胞シートの製造販売承認を厚生労働省に申請した。iPS細胞を使った医療用製品の承認申請は世界初とみられる。
対象となるのは、心筋梗塞などで心臓の動きが悪くなる「虚血性心筋症」の患者の治療。悪化すると心臓移植などが必要になるが、国内では臓器提供者が少ない現状がある。
同社の最高技術責任者を務める阪大の澤芳樹・特任教授らは、人のiPS細胞から心筋細胞を作り、直径3・5~4センチ、厚さ0・1ミリのシートを作製。2020年1月~23年3月、阪大病院など4施設で患者計8人に対し、1人あたりシート3枚(細胞数は計約1億個)を心臓に貼り付ける治験を行った。
澤特任教授や同社によると、移植を受けた8人全員で安全性を確認。移植後26週よりも52週の方が症状の改善がみられ、社会復帰も果たしているという。
同社の草薙尊之社長は「ようやく第一歩を踏み出すことができた。一日も早く承認をいただき、患者さんに治療を届けたい」と話している。同社が作製したiPS細胞由来の心筋細胞のシートは、13日開幕の大阪・関西万博で展示される。
iPS細胞を活用した医療用製品の開発は国内外で進み、製薬大手の住友ファーマなどが今年中にも、パーキンソン病の患者に移植するiPS細胞由来の神経細胞について承認申請を目指している。
八代嘉美・藤田医科大教授(幹細胞生物学)の話「既存の治療では改善が見込めない患者に対し、治療の選択肢が増えれば大きな意義がある。iPS細胞の技術を新たな医療として申請できる段階に来たのは画期的なことだ」

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