大津市が、来庁者から暴言や不当な要求を受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」について職員にアンケートを実施したところ、「受けたことがある」とした回答が6割に上ったことがわかった。この結果を受け、市は4月から職員の名札の表記を見直し、来庁者向けの啓発ポスターを掲示するなどの対策に乗り出した。(角川哲朗)
市は昨年8月、カスハラの実態を把握するとともに課題をあぶり出そうと、全職員4770人を対象にアンケートを実施。777人から回答があった。
「カスハラを職場で受けたことがある」としたのは483人。回答者の62・2%を占め、窓口や福祉関連の業務で多かった。
内容は「行政手続きなどへの不当要求」や「長時間の拘束」が多く、具体的に15分おきの繰り返しの電話や机をたたく行為のほか、言葉による脅しを受けたという回答があった。
カスハラに関する市の課題を尋ねたところ、▽職員のカスハラへの対応方法が不明瞭▽名札がフルネームで個人を特定されやすい▽職員の接遇レベルが低く、カスハラを招きやすい――といった回答が寄せられた。
このため、市のハラスメント防止指針にカスハラの定義を追記。窓口や電話でのマニュアルも整備した。一般職の名札はフルネームだったが、顔写真を廃止して名字だけを平仮名で書き、ローマ字表記を添える形式に変更。過去には窓口で「SNSにあげるぞ」と写真を撮られそうになった事案があったといい、市職員支援室は「職員の安全に配慮した」と説明する。
一方、アンケートでは「来庁者側がカスハラを知らない」と市民の間に認識が浸透していないと指摘する声もあり、カスハラに該当する行為をイラストで示した啓発ポスターを作製。本庁舎や支所など、市民がよく利用する窓口の一部に貼り出している。
また、庁舎の管理規則を改定。業務の妨害や「職員の承諾を得ず、撮影、録音、放送その他これらに類する行為」をする人を庁舎から退去させることができるようにした。希望する部署には、長時間に及ぶ電話などへの抑止効果を狙って録音装置を配布することも決めた。
同室は「カスハラが続くと職員への精神的な負担が多くなり、行政サービスの低下につながりかねない。市民にも職務に専念できる環境づくりにご協力いただきたい」としている。