【永田町番外地】#21
麻生太郎元首相が、トランプ関税の直撃に茫然自失、なす術なくへたり込む石破茂首相に三の矢を放った。トランプ米大統領が日本に対する関税引き上げを発表したのは2日。石破はようやく7日夜になってトランプとの電話会談にこぎつけ、関税協議の開始を受け入れてもらったが、これといって算段があるわけもない。加えて、石破が対米交渉役に指名したのが通商交渉素人同然の赤沢亮正経済再生相だったことから、株式市場は史上空前の下げ幅を記録してしまった。実は当初、石破は安倍政権下の対米交渉で辣腕を振るった茂木敏充元外相に打診したが、やんわり断られている。
茂木はこの時、許諾の判断を相談した麻生から「次がある身で石破のドロをかぶることはないわなあと言われたようです」と茂木周辺は明かす。
故・安倍晋三元首相亡き後、その盟友だった麻生とトランプが厚い信頼関係にあることは周知のとおり。石破は年明け早々、トランプとの首脳会談を前に麻生を首相官邸に招き入れアドバイスを求めてもいた。
「麻生さんからすれば、茂木はポスト石破の有力カードです。それを石破は何の相談もなく、一本釣りして引きはがし、取り込もうとしたわけですから、この野郎って話でしょうね」(全国紙記者)
麻生は4日、派閥裏金問題の党処分が明けた旧安倍派幹部の西村康稔元経産相の地元兵庫で開催された国政報告会に出向き、西村が茂木同様、麻生にとってポスト石破の有力カードであることをアピールした。
さらにさかのぼれば3月末、石破が主導した高額療養費制度見直しを凍結させ、予算案の修正に追い込んだのも麻生の仕掛けだった。
麻生は3月、早い段階で厚生族のドンでもある自派閥の参院議員の武見敬三・前厚労相を議員会館の自室に呼び込み、“凍結”議連をつくるよう指示。これを受けて武見は「高額療養費自己負担率限度額の引き上げは……当該制度を利用している当事者の意見を聞くことなく短期間の審議会による議論で決定するなどプロセスが不適切であった」として“高額療養費制度と社会保障を考える議員連盟”を立ち上げた。
「強引に採決に突き進めば、参院自民党からかなりの数が造反したでしょうから、石破は抜いた刀を鞘に収めるしかなかった。麻生さんはしてやったりですよ」(前出の全国紙記者)
徳俵に足がかかり、必死にこらえる石破だが、前門のトランプ関税に後門はオオカミばかり。うっちゃりに出るパワーはもう残されていないように見える。(特命記者X)