石破首相の最側近である赤沢経済再生相が30日から、3日間の日程で訪米する。今月17日の関税交渉に続き、ベッセント財務長官らと2回目の協議に臨む予定だ。前回の訪米ではトランプ米大統領の「想定外」の出席に泡食ったが、今回も「格下」らしい振る舞いに終わってしまうのか。早くも不調の兆しが見えている。
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再訪米を前に赤沢氏は28日、記者団に「関税措置の撤廃は譲れない」「投資などいろいろな経済的措置で折り合えないかを探る」と強調。日本の対米直接投資が5年連続で世界一であることなどをアピール材料として「特別扱いを求める」と意気込んだ。
ただ、トランプ大統領に相対して自身を「格下」と卑下した赤沢氏である。「我々はある意味、『優等生』として扱ってもらって全くおかしくない」と、言葉の端々に奇妙な「米国ファースト」をにじませた。暴走するトランプ大統領の尾を踏みたくない感がアリアリだ。
こんな調子では、最大の懸案である自動車関税の撤廃も先が思いやられる。
日米の安全基準の違いを「非関税障壁」として問題視するトランプ大統領に対し、日本政府は輸入車の安全審査に関する手続きを簡略化する措置の「適用拡大」を交渉カードとして温めているという。どういうことか。
俎上に載っているのは「輸入自動車特別取扱制度(PHP)」。通常の審査よりも提出書類が簡素化され、車両による審査なども免除される仕組みだ。
現状、対象となるのは年間輸入台数が5000台以下の車両。この制限台数を倍増して適用拡大を図る案が政府内で検討されているのだ。
しかし、意味があるのかどうか。日本自動車輸入組合(JAIA)によると、昨年度の輸入車の新規登録台数は約33万台。うちアメ車で5000台以上を登録したのはジープ(9721台)のみ。PHPの制限台数を倍増したところで、事実上の「ジープ特例」に過ぎない。
■トランプに花を持たせる
「トランプ大統領は日本の自動車市場の『開放』を求めているわけですが、PHPの適用拡大による効果はほぼないでしょう。輸入業者にとって手間ヒマがかからないというメリットはあれど、ユーザーの買う動機につながるわけもなく、アメ車が日本市場で売れるかどうかとは関係がないからです。米側がPHPの適用拡大にどんな反応を示すか分かりませんが、トランプ大統領に『交渉の結果、日本が折れた』という花を持たせる意味では、効果的かもしれません」(経済ジャーナリスト・井上学氏)