文化審議会が重要文化財に登録するよう文部科学相に答申した「太陽の塔」(大阪府吹田市)。1970年大阪万博のシンボルだった太陽の塔は斬新なデザインで多くの人をひきつけてきた。万博閉幕後には維持費などの問題で一時、取り壊す計画が浮上したこともあり、保存を呼びかけるなどした愛好家らは「2025年大阪・関西万博の会期中の答申で感無量。世界遺産登録にまた一歩近づいた」と喜んだ。
小学生のころに万博会場を幾度となく訪れた大阪市住之江区の藤井秀雄さん(66)にとって、太陽の塔は初めて会場で見たときから胸に焼きついて離れない「かけがえのない存在」だ。過去・現在・未来を表す3つの顔と、はばたくように両腕を広げた姿が「人としての生きざまを教えてくれている」ように見え、励まされてきた。
高校生時代に取り壊す計画を聞いた藤井さんは「太陽の塔あってこその万博会場跡」と主催者の協会に投書。その後に撤去反対の機運が高まり一転保存へと至った。
開催中の大阪・関西万博でも連日会場を訪れる。「70年万博の感動を今の万博へとつなぐ契機になる」と力を込めた。
太陽の塔の保存活動には大阪府も力を入れてきた。昨年には建築や都市計画、芸術の専門家らが「国土景観のうえで象徴的な意味を持ち、同時に文化的な景観として価値を有する」と評価した調査報告書を文化庁に提出。将来的な世界遺産登録に向けて機運醸成に尽力した。
記者団の取材に応じた吉村洋文知事は「撤去予定だった太陽の塔の指定は非常に意義深い」として上で「大阪・関西万博でもレガシーを残していかなければいけない」と話し、撤去か保存かで議論が進む大屋根リングの一部保存を主張した。(木ノ下めぐみ)