性犯罪クルド人公判が異例の展開 犯行目撃少年「覚えてない」80回 被告側に脅されたか 「移民」と日本人

埼玉県川口市内でのクルド人男による性犯罪再犯事件の裁判が異例の展開をたどっている。今月19日にさいたま地裁で開かれた第4回公判では、犯行時に車に同乗していたクルド人とみられる中学3年の少年(14)が証人出廷したが、捜査段階の供述をひるがえし「覚えていない」を約80回繰り返した。検察側は事件の翌日、少年が被告側に脅され口止めされた可能性を指摘。次回公判では捜査段階の取り調べ検事が証人出廷する事態となっている。
被告を「アニキ」と呼ぶ関係
不同意性交の罪に問われているのは、トルコ国籍のクルド人で無職、ハスギュル・アッバス被告(22)。証人出廷した少年は、3歳から日本に住んでいるという事実上の「移民2世」で、公判でもトルコ語通訳がついたものの、日本語で答える場面が多かった。被害少女とは友人関係で、被告のことは「アニキ」と呼ぶ関係であることが明かされた。
ところが、検察側が少年の供述調書に基づき事件について尋ねると、日本語で「覚えてないです」と繰り返し始めた。
――事件の夜に車の中で被告人が被害者に「何歳ですか」と聞き、「中1」と答えると「じゃあ13歳でしょ。まだ子供じゃん」と話していたと、検察官に話さなかったか。
「覚えてないです」
――あなたが車に戻ると、被告人が被害者に暴行している姿を見た。被害者は「やめて、助けて」といやがっていたと、検察官に説明しなかったか。
「覚えてないです」
自身が署名・指印したとする供述調書を示されても「覚えてない」と証言し、聞いていた室橋雅仁裁判長が「署名したことを覚えていないのか」と問いただす場面もあった。
裁判官「被告は怖い存在か」
起訴状によると、ハスギュル被告は少女(当時12歳)が16歳未満と知りながら、昨年9月13日夜、川口市内のコンビニ駐車場に止めた車内で性的暴行を加えるなどしたとしている。不同意性交等罪は、被害者が16歳未満の場合は同意があっても罪に問われる。被告は「年齢を知らなかった」「同意があった」などと起訴内容を否認している。
ハスギュル被告は前回公判同様、黒い丸首シャツに黒っぽいジャージーのズボン姿。証言台と傍聴席との間についたてが立てられ、傍聴人からは見えないようになっていたが、ハスギュル被告からは見えるようになっており、少年は首筋に赤いいれずみが入った被告の面前で証言。通訳を含めた約2時間半のやり取りの中で「覚えていない」を少なくとも77回繰り返した。
一方、検察側は事件後の9月30日、検察庁で少年が署名・指印したとする「検面調書」をもとに質問。事件翌日に少年がハスギュル被告とその友人に重機置き場へ連れていかれ、「ハスギュル被告は悪くない。全部私が悪い」と言わされ、動画を撮影されたと供述していたことを明かした。
少年の不自然な証言から、裁判官も「きょうまでに被告人やその友人、家族に会ったか」「被告人は怖い存在か」などと質問。少年が被告側から脅され、口止めされた可能性を疑っていた。次回公判では、少年の捜査段階での供述調書が作成された際の取り調べ検事が証人出廷することになった。

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