斎藤元彦知事の給与カット「幕引きにならない」「態度は前よりひどくなっている」…兵庫県議会で追及の動き

兵庫県議会(定数86、欠員3)の6月定例会が3日、開会する。斎藤元彦知事は内部告発問題を巡り、告発者の私的情報が漏えいされた責任を取って自身の給与カットを行う意向を示したが、多くの会派は「幕引きにはならない」と反発している。県議会が斎藤氏をどこまで追及するのかが注目される。
「大問題」

内部告発について調査した県の第三者委員会が今年3月、斎藤氏の10件のパワハラを認定するなどした際、県議会は追及に及び腰だった。斎藤氏は昨年11月の知事選で再選されており、「民意を得た」との声が多かったためだ。
ところが今年5月、別の第三者委が、告発者の前県西播磨県民局長(昨年7月に死亡)の公用パソコンに保存されていた私的情報を、前総務部長が県議3人に漏えいしたと認定する報告書を公表。漏えいは斎藤氏らの指示だった可能性が高いと指摘し、県議会では「大問題だ」との受け止めが広がった。多くの会派が6月定例会の代表質問などで、批判のトーンを強めるとみられる。

議論のポイントは主に三つある。一つは、私的情報の漏えいが認定された責任を取り、斎藤氏が自身の給与カットに関する条例改正案を提案する考えを示したことだ。
最大会派・自民党のベテラン県議は「改正案を可決すれば、知事は『けじめをつけた』と主張するだろう。容易には認められず、ギリギリまで各会派内で議論が続くはずだ」と予想する。
別の自民県議は「これで幕引きにしようとしているのではないか。問題が解明されないまま終わるのは許されない」と話す。
二つ目の焦点は、斎藤氏が漏えいについて「指示していないという認識だ」と繰り返すなど、第三者委の指摘を正面から受け止めていないことだ。公明党の県議は「(漏えいの指示については)複数の職員の証言がある中、知事だけが違うことを言っており、疑念を拭い切れていない。記者会見でも同じ回答をずっと繰り返しており、県民に対する説明の不十分さを自覚していない」と憤る。

立憲民主党県議らでつくる「ひょうご県民連合」の上野英一幹事長は「自分の非を認めようとしない知事の態度は、以前よりひどくなっている。毅然とした態度で臨む」と語った。
三つ目は、県が前総務部長の刑事告発を見送ったことだ。議会内には疑問を呈する声が多く、自民と維新の会、公明の3会派は5月30日に幹事長が会談し、県に告発を要請する方向で議論を進めることを確認した。

斎藤氏の進退にまで踏み込むかは、会派間で温度差がある。
共産党は2日、「行政の長としての資格を失している」として、斎藤氏の辞職を県に申し入れた。ひょうご県民連合内でも「辞職を求めていく」との声が強い。
一方、公明県議は昨年9月に全会一致で不信任決議を突きつけた後、斎藤氏が知事選で再選されたことを念頭に、「中途半端に動くと、昨年と同じ轍を踏むことになる。知事は知事選での公職選挙法違反容疑で告発されており、捜査の結論が出るまで、冷静に見極めるべきだ」と話す。
維新の佐藤良憲幹事長も「知事が漏えいを指示したのかどうか分からない状況では、不信任決議は判断できない」とする。
自民県議は「私の支援者の中にも知事の支持者がいる。夏の参院選を考えると、一気呵成に不信任を突きつけることはできない」と漏らす。
一方、斎藤氏を支持する「躍動の会」の白井孝明県議は「会派としての対応は決めていないが、(漏えいを)指示していないと知事がおっしゃるなら、追及する話ではない」と話した。
白鳥浩・法政大教授(現代政治分析)の話「斎藤知事は一連の問題に人ごとのように対応している。県議会がしっかり対応できなければ、首長は第三者委で都合の悪い結論が出ても、受け入れずに開き直れば良いということになってしまう。悪い先例を作らないよう、議会は権力の暴走を止めるという本来の役割を果たす必要があり、不信任決議案を出すべきだ」

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