京都市東山区のマンションで令和5年12月、住人の高齢男性を刺殺したとして殺人罪などに問われた元陸上自衛官の水島千翔(ゆきと)被告(22)の裁判員裁判の論告求刑公判が17日、京都地裁(大寄淳裁判長)で開かれた。検察側は「犯行は残虐かつ卑劣で、動機も理不尽極まりない」と指摘し、無期懲役を求刑した。弁護側は「犯行は場当たり的で更生の可能性がある」として懲役15年が相当と主張し、結審した。判決は23日。
検察側は論告で「誰が被害者になってもおかしくない無差別殺人だった」と非難。自衛隊の格闘訓練で得た技術を悪用し、足が不自由な被害者を狙った卑劣な犯行だったと指摘した。「人を殺せば自衛隊から逃げる口実になる」という動機についても「安易かつ身勝手」と訴え、再犯の恐れもあると指弾した。
これに対し弁護側は弁論で、被害者を複数回刺したり、踏みつけたりしたのは「パニックになったためであり、苦痛を与える目的ではなかった」などと主張。犯行と自衛隊の格闘訓練は無関係だったとした上で、仕事のストレスが事件の引き金となったことについては「特別に悪質な動機とはいえない」と述べた。また被告が抱いていたとする殺人願望に関し「一般的な興味のレベルであり、言葉を裏付ける事実はない」とした。
被告は最終意見陳述で「被害者に申し訳ないと思っている。刑務所で償って必死に更生していきたい」と話した。
起訴状によると、5年12月3日夜、マンション2階と3階の間の階段踊り場付近で、岡田好次郎さん=当時(82)=を転倒させ、包丁で背中を複数回突き刺し、殺害したとしている。