東京都内は都議会議員選挙の選挙期間真っ最中だ。私の家のすぐそばにも看板が立てられ、大田区の候補者がポスターを掲げている。
【グラフ全部見る】唖然、愕然… データが示す「オールドメディア」の“残念すぎる”選挙報道の実態
ところが、選挙戦はまったく盛り上がっていない。とくに地上波テレビ局は、選挙期間中とは到底思えないような、猛暑などの話題を放送している。国政については減税か給付金かの議論が報道されるが、都議選の争点はほとんど伝えようとしていない。
昨年は東京都知事選挙、衆議院選挙、そして極め付きは兵庫県知事選挙が「SNS選挙」と揶揄され、テレビや新聞が選挙期間に選挙を報道しないことが批判された。とくに兵庫県知事選では、テレビや新聞は選挙終了後に「オールドメディア」呼ばわりされ、もはや政治を動かすのはネットであり、役に立たないとこき下ろされた。
その後、昨年末ごろからキー局・ローカル局を問わず、こうした選挙報道の姿勢を反省する空気が、メディアコンサルタントである私のところに伝わっていた。
オールドメディアの姿勢は“過剰な自粛”
そもそも選挙期間中に選挙報道をしないのは、放送法や公職選挙法に明確に書かれているからではない。むしろ、公職選挙法148条では新聞が選挙について報道、評論する自由を大幅に認めている。
確かに、同条の“ただし書き”には「表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」」との規定がある。だが、関係官庁の見解や過去の判例からも明らかなように、一般的な報道・評論を制限するものではない。つまり、オールドメディアによる自粛的な報道姿勢は、ただし書きを拡大解釈した“過剰な自粛”なのだ。
テレビ局の中にもこの点を誤解している人は多いが、自粛にすぎないなら積極的に選挙報道に取り組むべきだとの主張が各局内でひそかに高まっている。NHKの稲葉延雄会長は、兵庫県知事戦直後から選挙報道のあり方を検討すると表明していた。
また、日本新聞協会は6月12日に「インターネットと選挙報道をめぐる声明」をホームページ上に公開。「新聞・通信・放送といったメディアの報道について、『選挙の公正』を過度に意識しているとの批判がある。(中略)有権者の判断に資する確かな情報を提供する報道を積極的に展開していく」と宣言した。
こうした一連の流れから、今回の都議選では各局が選挙報道を盛んに放送してくれると私は期待していた。ところが、6月13日の都議選の告示日以降、積極的な選挙報道なんてどの局も放送していない。オールドメディア呼ばわりされた理由がわかっていないのだろうか。
テレビの間隙を縫ったYouTube