郵便局点呼問題 法令違反の横行が目に余る

安全運行にかかわる基本を怠る違反が、これほど常態化していたとは驚くばかりだ。日本郵便は配送の混乱を防ぐとともに、再発防止を徹底しなければならない。
国土交通省は、郵便局で運転手への法定点呼が適切に行われていなかったとして、貨物自動車運送事業法に基づき、軽バンの一部使用を停止する処分を出した。
国交省は6月、郵便局の拠点間の輸送を担うトラックなど約2500台の事業許可を取り消す異例の処分を出した。これと合わせて郵便局への特別監査を進めた結果、新たに点呼の未実施や虚偽報告など多数の違反を確認した。
8日から47都道府県の111郵便局で、計188台の軽バンを15~160日間の使用停止とした。最終的には約2400局が処分の対象となる見通しという。
点呼は運転手の健康状態や酒気帯びの有無を調べるために、法令で義務づけられている。物流企業にとって安全運行の要である。
集配業務を担う約3200局のうち、7割以上もの局に法令違反が広がる見込みだとは、あきれるほかない。日本郵便は今回の処分を重く受け止めて、法令軽視の社風を一掃するべきだ。
赤い軽バンは、ポストの集荷や家庭への配達を担う地域配送の主力だ。岩手県や福井県などの9局では、1台しかない軽バンが使えなくなる。北海道では17局で処分期間が100日を超え、年末年始も車両停止が続く見通しだ。
配達への悪影響を抑えるため、他社への委託を進めるなど万全を期さねばなるまい。
民営化による活性化とサービスの多様化を目指した郵政民営化法の成立から、今月で20年になる。だが、現実は、サービスの低下に加え、不祥事ばかりが目立ち、期待外れとなっている。
日本郵便の企業統治の不全も深刻で、顧客目線も欠いたままである。先月、総務省が行政指導した郵便物の不着問題は典型例だ。
これまでは、配達員が故意に隠したり廃棄したりするなど犯罪として認定された場合に限って、公表していた。だれの責任で紛失したか分からない場合などは公表していなかったという。
これでは、顧客は郵便物が届かなかったことを知らないままになりかねない。総務省が原則、公表するよう指導したのは当然だ。
郵便は、全国一律で利用ができるユニバーサルサービスである。国民からの信頼が重要であることを肝に銘じてもらいたい。

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