京都大の霊長類研究所のチンパンジー飼育施設工事を巡る研究費不正問題で懲戒解雇された松沢哲郎元所長が「不当」として地位の確認を求め、京大側が逆に約2億円の損害賠償を松沢氏に求めていた訴訟が、京都地裁で和解していたことが判明した。7日付。毎日新聞が入手した和解調書によると、松沢氏が解決金として約3300万円を支払い、京大は請求を取り下げる内容。
松沢氏はチンパンジー研究の第一人者として知られる。京大は2020年6月、チンパンジー用ケージの整備に関連して松沢氏らによる不正支出が11~14年度に34件計5億669万円あったと発表。松沢氏の監督責任を問い、20年11月に懲戒解雇処分にした。
松沢氏は不正を否定し、21年4月に地位確認と未払い給与の支払いを求める訴訟を京都地裁に起こした。
一方、飼育施設工事に絡んで受けていた補助金を日本学術振興会に返還することになった京大側は22年10月、松沢氏を相手取り、約2億円の損害賠償を求め提訴。その後、退職金返還を求める訴訟も起こしていた。松沢氏の代理人弁護士は取材に対し、「裁判の長期化を避けるため和解した」などと説明した。
霊長類研は22年4月、「ヒト行動進化研究センター」に組織改編されている。【太田裕之、水谷怜央那】