《連立離脱を表明》「高市氏の玉木密会」「萩生田起用」「麻生太郎の公明嫌い」新聞各紙は公明党をどう論評したか

「そうはいかんざき!」。2001年の公明党CMでの決め台詞である。悪代官がカネを受け取っている場に神崎武法(かんざき・たけのり)代表があらわれて「そうはいかんざき!」と叫ぶ。ダジャレである。政治とカネが昔から問題だったこともわかる。
しかし公明党は当時も自民党と連立を組んでいた。なので本当に自民党に物申すことができるのか?とCMを見て思ったことを覚えている。実際に公明党は自民党に何があってもついていった。踏まれてもついてくる「げたの雪」と揶揄された。そんなことを言われて屈辱だろうに権力にいるのはやはり旨味があるのか、連立は続いた。しかし今回遂に公明党は連立離脱を表明した。要因は政治とカネ。あのCMから24年ぶり、初の「そうはいかんざき!」発動である。
朝日新聞、産経新聞はどう報じたか
新聞各紙はどう論評したか。朝日新聞政治部長は公明党という「ブレーキ役」が去り、高市自民党の保守化加速は確実と書いた。産経新聞政治部長は自民は公明に遠慮がいらなくなったとし、保守回帰にはまたとない追い風ともなると書いている。具体的には「高市氏は公明が嫌った靖国神社の参拝を堂々と行えばいい」「憲法への自衛隊明記に後ろ向きな公明への配慮もいらない」と。朝日と産経は正反対に見えて「自民の保守化」という点では同じ予想をしていた。
ただ、朝日新聞は公明党を「ブレーキ役」と書いたが、毎日新聞は安全保障関連法の成立時を例に挙げて次のように書いた。
《公明は法案の一部を修正させ「歯止めを掛けた」と主張するが、自民に押し切られて憲法9条の解釈改憲を容認したのが実態だった。》
そのあとに出てくるフレーズは、
《自民にどこまでもついて行く「ゲタの雪」と皮肉られた。》
ああ、ここでもゲタの雪。
では今回の件について最も気になる新聞にいこう。公明党機関紙である公明新聞である。連立離脱についてどう書いているのだろう? 読者(支持者)に何と伝えているのか? 知りたくなったので調べてみた。
公明新聞の印象的だった見出し
連立離脱を表明した翌日(10月11日)の一面は『公明、連立政権に区切り』。次の見出しが印象的だった。
『「清潔政治」の党是貫く』
『公明党らしさ不断に追求』
翌日(12日)は斉藤代表のインタビューを載せていた。ここでも「清潔政治の党是貫く」と「公明らしさ発揮を追求」とある。よほどこの2点を強調したいのだろう。それにしても「公明らしさ」に既視感があると思ったら、そうだ、「石破らしさ」だ。
どこがクリーンな政治で、どこが平和の党なのか?
石破茂首相は「『石破らしさ』というものを失ってしまった」(9月2日・党両院議員総会)と後悔していた。なるほど石破政権とはらしさを失ったもの同士の連立だったのか。いま反省会が始まっている。
確かにここ最近だけでも公明党はどこがクリーンな政治で、どこが平和の党なのか?と思ってしまう対応が続いていた。たとえば自民党の西田昌司氏を参議院選で推薦したことだ。西田氏は太平洋戦争末期の沖縄戦で犠牲になった学徒隊の生徒や教員らを慰霊する「ひめゆりの塔」の説明書きについて「歴史の書き換え」などと主張して批判された。裏金議員でもあった。公明党はこういう人物を推薦していた。さらに昨秋の衆院選では自民の裏金議員の大半を推薦し、自民を非公認となった候補者にも推薦を出していた。
さすがに耐えられなくなった党の中から批判が出たのだろう。代表インタビュー(12日)では昨年の衆院選、今年の都議選と参院選での厳しい結果を受け、その総括に当たり党幹部が全国を回ったとある。すると裏金議員を推薦したことに「公明党の清廉なイメージを損ねたのではないかとの指摘を受けました」という。清廉なイメージがまだあると思っているのはご愛敬だが、地方の声を聞いてさすがにマズいと感じた様子がひしひしと伝わってくる。
さて、見出しのインパクトに目が行ってしまったのは次の記事だ。公明党が連立解消を発表する日の朝刊である。
「そもそも公明党は『「高市嫌い』が本音なのではないか」と…
『連立か離脱か 公明衝突 玉木氏密会や萩生田氏起用「平手打ち」』(朝日新聞・10月10日)
ひ、平手打ち? どういうことかと思って読むと、次の2点が公明党の態度硬化を招いたという。
・高市氏は総裁に選出された直後、公明との連立維持を確認する前にもかかわらず野党の国民民主党の玉木雄一郎代表と密会。

・裏金問題の中心だった旧安倍派の元幹部、萩生田光一氏を幹事長代行に登用。
これが「連立パートナーを平手打ちするような対応」(公明関係者)に感じたというのだ。そうか、もう萩生田氏は一種の暴力装置に思えるのか。裏金問題にも旧統一教会にも関係した“スキャンダルの二刀流“の破壊力にしみじみしてしまった。
ちなみに麻生氏の存在もやはり大きい模様だ。
《高市体制で影響力を持つ麻生太郎副総裁は「公明嫌い」で知られ、岸田文雄前政権下で国民民主を連立に加えようと模索した経緯がある。こうした動きも「公明外し」と映った。》(毎日新聞)
「玉木密会」に「萩生田起用」、「麻生太郎の公明嫌い」。産経新聞は、そもそも公明党は「『高市嫌い』が本音なのではないか」と訝しむ。
では公明党はすべての面で被害者なのだろうか? 前述したように何があっても自民についていき、権力の匂いに敏感という実績がある。忘れられないのは2017年の東京都議選のときだ。あのとき小池百合子都知事の地域政党「都民ファーストの会」の人気が圧倒的と見るや、公明両党は自民党との長年の協力関係を断って「都民ファースト」との選挙協力を進めた。結果、公明党は全員当選した。その変わり身の早さには驚いた。
そう考えると今回も公明党は理念うんぬんだけでなく、単に高市自民党の可能性を見限ったからという部分もないか。政治の混乱期にはそうした各々の野心も頭に入れた上で見ておいたほうがよい。
そんな野心を大義に変えて混乱期を抜け出すのはどの政党、政治家なのだろうか。結果は当然私たちの生活にも跳ね返ってくる。誰がどういう振る舞いをするのかきちんと見ておきたい。
(プチ鹿島)

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