高市首相「各国首脳を射止めた」外交術が凄いワケ

首相就任から、次々と外交デビューを果たしてきた高市早苗氏。その多くが賞賛を集める結果となっている。
【写真】「これは日本人はなかなかできない」高市首相の“凄い外交術”がわかるシーン
たとえば、2025年10月末のASEAN首脳会議の壇上。男性リーダーたちの間に漂う硬質な空気の中で、高市早苗首相は、入場からわずか数秒で会場の視線を集めた。その立ち居振る舞いには、空気を変える力があった。
日本初の女性首相として世界の注目を浴びる中、彼女の振る舞いには常に、「自らが場の中心に立つ存在である」という確信があった。
「世界の真ん中で存在感を示す日本外交を取り戻す」という明確な意志が、その一挙手一投足ににじんでいるのだ。
高市首相の「姿勢」が印象づけるもの
一方、2024年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、同じく外交の舞台に立った石破茂前首相の所作は、その対極にあった。
会場に入ると、椅子に腰を下ろしたまま手元のスマートフォンや資料に視線を落とし続け、挨拶に訪れた各国首脳に対しても、立ち上がることなく座ったまま握手を交わした。
その姿勢は無作法として受け取られるだけでなく、相互理解の機会を自ら閉ざしているようにも見える。こうした振る舞いが重なると、場の流れは停滞し、会話の熱が失われていく。
国際交渉の現場では、ほんのわずかな表情や動きが空気を左右する。そしてリーダーの所作は、発言以上にその国の姿勢を語る。
最近、ASEAN首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と続いた、外交シーンでの高市氏の立ち居振る舞いを手がかりに、リーダーが持つべき“存在感”について考えてみたい。

高市首相の印象を決定づけているのは、まず姿勢である。
会場に入る際、耳と肩のラインが横から見て一直線に揃い、胸が自然に開いている。腕を前後にしっかり振る歩き方は、堂々としていながらも力みがない。背筋の伸びた姿勢は、観察する側に「落ち着き」「能力」「信頼」を感じさせる。
これらは心理学やリーダーシップ研究でも繰り返し示されてきた傾向だ。

姿勢とは内面の秩序を映すサインである。高市首相の身体の安定感は、「揺るぎのない判断軸を持つ人」という印象を瞬時に生み出していた。
その安定感は、あらゆる動作の端々にも一貫して見られた。
動作に無駄がなく、相手と対話するときも、身体の軸をぶらさずに毅然とした姿勢を保ちながら自然な距離で向かう。その構えが、安心感だけでなく存在の厚みを生み出している。
行動の目的が明確で、無駄な動きが少ない人ほど、内面にぶれがない印象を与える――その視覚的効果を、彼女は自然に体現していた。

「相手の目線を離さない」アイコンタクト
各国の首脳との挨拶で、彼女は相手の視線が自分を捉える前にまっすぐ視線を送る。挨拶を終えるまで相手の目線を離さず、終えた瞬間には次の首脳とすぐにアイコンタクトを交わす。
ほんの数秒で相手が入れ替わる中で、1人ひとりと密度の高い視線を保つのは容易ではない。別れ際まで視線を交わすその丁寧さが、形式を超えた誠実さと主導的な姿勢を同時に印象づけている。

発言の冒頭や挨拶の転換点では、眉をふわりと上げる、いわゆる「アイブロウ・フラッシュ」が見られた。心理学では、関心と親しみを示すサインとして知られている。
多くの日本人にとっては照れくさく、意識して行えば不自然に見えがちだが、彼女の場合、その一瞬が自然で温度を帯びている。その微細な表情が、相手に安心感を与えながら対話を前に進める力になっている。
さらに、口元のわずかな動きが、感情のニュアンスをよく伝えている。発言に合わせて口角がしっかりと動き、頬と目元が同時に反応する。
心理学の研究では、日本のように目元から感情を読み取る文化もあれば、口元の変化を重視する文化もあることが知られている。
高市首相は、そのどちらにも自然に対応できる表情を備えている。理性的でありながら温かみを感じさせるその表情は、どの国の相手に対しても安心感と信頼をもたらす。この柔軟さこそ、国際社会で評価されるリーダーの特徴である。

「絶妙すぎるタッチ」で相手の領域へ踏み込む
外交の現場で問われるのは、発言内容だけではない。どの距離で、どの角度で、どのように相手に向かうか。その一瞬の動作が、交渉の温度を決める。
高市首相は相手の領域に踏み込みすぎず、しかし自然に能動的に踏み込む。
たとえば、相手国の首脳が座るテーブルに近づく際、相手の椅子やそのテーブルの端に軽く手を添えて言葉を交わす。わずかな所作だが、相手の領域に敬意を払いながら、自分の存在を場の中心へ自然に溶け込ませる絶妙な動きである。

また、相手の反応に合わせて身体の角度や動きを細やかに変える。相手が膝を折って慎ましやかに挨拶すれば、自らも同じ姿勢で応じ、リラックスしている相手には軽やかな身振りでテンポを合わせる。

こうした柔軟な反応は、単なる礼儀ではなく、関係構築の一部である。外交では、自国の立場を主張することと同じくらい、相手の文化や距離感に合わせて“歩み寄る柔軟性”を見せることが重要だ。その「合わせる力」が、日本という国の印象を硬直ではなく協調として伝える。
1人のリーダーの身のこなしが、国家全体の“関係の姿勢”を映し出す。それを体現しているのが高市首相の非言語戦略である。

また、会議開始前の控え室では、中国の習近平国家主席やインドネシアのプラボウォ大統領、フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領など多数の各国首脳と順に挨拶を交わした。

短時間で多くの要人と1人ずつ向き合い、表情や姿勢を瞬時に切り替えながら言葉を交わす。その動作の1つひとつが、外交の“信頼形成”そのものである。
形式的に座って待つだけでは得られない、自ら動くことで関係を築く力が、そこには感じられた。その姿は、国としての存在感を静かに一歩前へ押し出しているように見えた。
日本外交に再び見えた「品格ある主導性」
APEC首脳会議以降の一連の外交においても、高市首相の振る舞いには、「日本という国は自信と敬意をもって対話する」という一貫したメッセージが息づいていた。
アメリカのドナルド・トランプ大統領、韓国の李在明大統領、そして中国の習近平国家主席との会談でも、多様な文化・宗教・価値観が交錯する国際社会の中で、彼女は“支配”でも“服従”でもない第3の姿勢――すなわち節度ある主導性を静かに示してみせた。

長らく「調整型」と評されてきた日本外交だが、彼女の立ち姿には、調整を超え「構築」へと向かう意志が宿っている。
立場を主張する強さと、韓国の国旗に対しても一礼を見せたように、相手を尊重する柔軟さ。その両方を1つの身体に同居させることができる高市首相は、リーダーとして、少なくとも外交面においてはパーフェクトな資質を持っていると言えるだろう。
高市早苗首相が示した“存在感”は、日本人が長らく見失っていた「品格と主導性の両立」が、いまも確かに可能であるということを、静かに教えてくれる。
安積 陽子:ニューヨーク州立ファッション工科大学主任講師/国際イメージコンサルタント

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