「日本のスキー場に売った覚えはない」エスカレーターの中国メーカー社長が驚きの証言…監視員の配置は必要 小樽スキー場5歳児死亡事故

北海道小樽市のスキー場で、5歳の男の子が命を落とした事故から9日。1月6日、警察による捜査のメスが入りました。
片山侑樹記者「午前10時すぎです。捜査員がスキー場のセンターロッジへ家宅捜索に入ります」
捜査員が管理事務所など3か所からパソコンや過去の事故の資料を押収しました。
《死亡事故が起きたスノーエスカレーターとは?》
事故が起きたのは、駐車場とゲレンデを結ぶ「スノーエスカレーター」です。
家族でスキーに訪れていた札幌の後藤 飛向(ごとう・ひなた)ちゃんは、母親と一緒にエスカレーターに乗り、降り口の近くで転倒し、エスカレーターの終点のすき間に右腕を挟まれました。
《駆けつけた従業員が証言「腕が入ってしまい…」》
駆けつけた従業員(12月29日)「(降り口の)ふたが開いていて、子どもがこのような感じで腕が入ってしまっていた。ベルト通るすき間に異物が入るとこのように開く」
飛向ちゃんは、意識不明の状態で病院に運ばれ、その後、死亡しました。
死因は、巻き込まれた衣服で首元が圧迫されたことによる窒息死でした。
《非常停止装置が働かなかった…安全管理に問題は》
朝里川温泉スキー場 玉川謙介総支配人(12月29日)「母親が緊急停止ボタンを押して止めたということを聞いた」
スキー場の運営会社によりますと、このエスカレーターは本来、降り口のフタが開いたり、すき間に物が挟まったりすると、非常停止装置が働き、ベルトが止まる仕組みですが、今回の事故では作動しなかったということです。
また、スキー場には、同様のエスカレーターが合わせて4基あり、これまでにも、利用者が転倒するなど複数の事故が起きていましたが、監視員を常時配置せず、事故当時も不在でした。
朝里川温泉スキー場 玉川謙介総支配人(12月29日)「設置当時は(降り口で)まっすぐ降りてもらう運用だったが、フラップ(フタ)に足を引っ掛けて止まるってことが続いたので(フタをかわすように)右に降りてもらう運用に変えた。非常に反省しているし、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
子どもに難しい動きを求め、安全を守る体制も不十分だったとみられます。
朝里川温泉スキー場 玉川謙介総支配人(12月29日)「機械の整備についての異常はなかった。(事故当日の)朝の段階では異常はなかった認識」
《中国メーカー社長が驚きの証言「日本のスキー場に売った覚えはない」》
運営会社は、事故が起きたエスカレーターは中国製で、6年前の2019年に設置したと説明しています。
JNNは、中国・河北省にある、このメーカーの社長を取材することができました。
製造した道沃機電(中国) 雷桐社長「事故の設備にうちのロゴがあるのを見て、とても不思議でした。日本のスキー場に売った覚えはありませんでしたから」
社長によりますと、2018年に、ある業者の通訳者から「スノーエスカレーターを日本で購入したい」と申し出がありましたが、当時はメンテナンスをする代理店が 日本になく断ったと言います。
翌2019年になり、同じ人物から「中国国内用に3基売ってほしい」と話があり、3基販売しました。ところが…。
製造した道沃機電(中国) 雷桐社長「出荷後は、どこに設置したのか連絡がありませんでした」
本来は、メンテナンスなどについて、購入したスキー場と定期的に連絡を取るそうですが、事故が起きたスキー場からも、連絡が来たことは一度もなかったと言います。
《なぜ…非常停止装置が動かなかった?》
非常停止装置は、なぜ動かなかったのでしょうか。HBC北京支局の記者がたずねると…。
製造した道沃機電(中国) 雷桐社長「可能性として考えられるのは、点検が行われていなかったからか、あるいは、故障を適時に発見できなかったことです。保守点検によって、初めて設備と、人員の安全をより充分に保証できる」
社長は、運営会社が きちんと点検をしていたのか疑問を呈したうえで、監視員やスタッフを配置しなかった安全体制の不備も指摘しました。
製造した道沃機電(中国) 雷桐社長「(監視員の配置は)必要です。当社のマニュアルでは、出口だけでなく、入り口にも人員配置が義務づけられています。(自社の製品は)この6年以上の間、装置に故障や問題があるというフィードバック(苦情)は受けていない」
《業務上過失致死罪の立件に向けた捜査のポイントは?》
堀啓知キャスター: 年末年始のスキー場で起きた痛ましい事故ですが、安全管理は適切だったのか、捜査が本格化していきます。
6日は、業務上過失致死容疑での家宅捜索が入りました。スノーエスカレーターは、点検のルールが法律にはなく、立証は簡単ではなさそうです。
コメンテーター 大川哲也弁護士: 業務上過失致死罪は、あくまでも個人の過失責任を問うものなので、処罰の対象は、法人ではなく、事故に直接かかわった従業員や、安全管理責任者などといった個人が対象になります。本件で、警察が、個人というのを誰を想定しているのかはわかりませんが、単に「危なっかしい機械だ」とか「危なっかしいことをやっていた」ということではなく、具体的に事故について、すき間に人が挟まれて死亡事故が発生するということについて、個人に予見可能性があったかどうかが問題になる。「緊急停止装置が稼働しなかった」「監視員がいなかった」という指摘があるが、「人が挟まれるのを予見できたのか」「緊急停止装置の点検が適切だったのか」「緊急停止装置がすぐ作動すれば死亡は回避できたのか」「監視員がいれば直ちに対処できたか」などということが具体的に問題になっています。
堀内大輝キャスター:どうやら、点検や運用のルールについて、公式に定められているものはないようなので、スキー場ごとの判断でやっているようです。メーカーの社長から入手した使用マニュアルには、上と下に監視員が必要だと定められていたという記載もあります。
《道内の別のスキー場ではエスカレーターどう運用?》
安全管理体制はどうあるべきだったのか?同じ中国メーカーのスノーエスカレーターが道内の別のスキー場にも設置されているということで、安全体制を取材してきました。
新得町にある「十勝サホロリゾート」です。
今シーズン、スノーエスカレーターを導入しました。事故のあった小樽のスキー場の製品と同じメーカーのものです。
2022年、日本にメンテナンスなどの代理店ができたため、契約できるようになりました。
毎朝、営業開始前に緊急停止ボタンなど、安全装置を点検しています。
これまで転倒する人はいても負傷者はいないということです。
堀内キャスター「体感ではスピードはそんなに出ていない、ゆっくり進むイメージです。入り口、そして、降り口と監視員の方が常にいるという状況です」
小樽では事故が起きた「降り口」です。
エスカレーターの”ベルト”と”フタ”のすき間は、ほんの数ミリほど。
ここに何か”モノ”が挟まった時に、どのように止まるのか見せてもらいました。
堀内キャスター「このように降り口のところのフタ、この部分が開くと、自動でこのアラームが鳴って止まるということです」
不測の事態が起きた時にベルトが止まる装置は、ほかにも…。
堀内キャスター「ここで人が止まってしまった時、滞った時にもセンサーが感知して緊急停止するというような仕組みになっています」
このように、二重三重の安全装置がある中で起きた、小樽の死亡事故。同じメーカーの製品を使う立場から見て、疑問も感じると言います。
十勝サホロリゾート・スキー場ゲレンデサービス 増子幸一課長「2段階のシステムになっているので、その2つのシステムが動作しなかったのはちょっと疑問に感じる」
堀内キャスター: 何十もの安全対策があって、自動で止まる装置に加えて、監視員の目、何かあったときには、手動で非常ボタンを押せば止まりますし、フタの部分がなるべく開かないように、サホロリゾートでは雪をかぶせてフタが大きくあかないように、四重五重の対策をしているということです。
《事故の再発防止に向けて…専門家の見解》
このような事故の再発防止、そしてエスカレーターを利用する際の注意点について、「Safe Kids Japan」顧問で、子どもの事故防止に詳しい専門家の山中龍宏さんに聞きました。
堀内キャスター: まず、再発防止に向けてですが、今回、服が巻き込まれて首元が圧迫されたことから、窒息に至った“衣服”の検証を提言しています。
この時期は冬休みで、親子でスキー場に行き、スノーエスカレーターに乗る機会もあると思います。
保護者の注意点として… ・エスカレーター上では歩かない ・転ばないように寄り添ってサポートする ・巻き込まれやすい服装は避ける 例)首がしまる恐れのあるフードのひもや手袋が落ちないようにする ひもなどは避ける、つけていても垂れないよう上着にしまうようにする
堀キャスター: スノーエスカレーターは、ゆるやかな斜面のところにあって、初心者がよく使う斜面の脇にあることが多いです。初心者の人が来ても大丈夫な運用にしていかなければならないですね。

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