高市首相が通常国会冒頭での衆院解散を検討し、総務省なども衆院選に向けた構えをみせる中、立候補予定者の陣営や街の人からは急転直下の動きに対する驚きの声が上がった。各地の選挙管理委員会や関連業者も、真冬の衆院選への準備を慌ただしく始めた。
「野党の準備は整っていない。正真正銘の奇襲作戦だ」。連立入りし、与党として初めて国政選に臨む日本維新の会の藤巻健太衆院議員(比例南関東ブロック)は10日、取材にこう意気込んだ。この日は事務所スタッフらに運動員や運転手、印刷物の手配を急ぐよう指示を出したという。
地震から2年が経過した能登半島を選挙区とする立憲民主党の近藤和也衆院議員(石川3区)は、首相が被災地を先月視察したことに触れ、「(復興に)まだまだ時間がかかると認識したはず。(選挙でなく)人手やお金をもっと能登に傾けてほしい」と批判した。
街を行き交う人々は期待や不満を口にした。東京都の中学校職員の男性(48)は「経済や日中関係など先行きが不透明な中、議論を前に進められるよう国会の勢力図を刷新してほしい」と訴えた。さいたま市の会社員男性(28)は「政権発足後まもない時期で、評価できるだけの材料がない。もう少し政権運営を続けて、解散に踏み切ってほしい」と注文をつけた。
真冬の選挙となりそうなことに、「選挙ポスターの掲示板の設置がうまくいくか心配」とこぼすのは札幌市選管の担当者だ。市内は8日、1月の観測記録を更新する大雪に見舞われ、今も路肩に雪の山が残っている。こうした状況で、2200か所超ある設置場所の地面に掲示板の支柱を据える作業は容易ではない。
前知事がセクハラ問題で辞職した福井県では、知事選(8日告示、25日投開票)の真っただ中。県選管の担当者は「知事選の対応があり、しかも3連休中なので職員の打ち合わせや選挙の関連業者への問い合わせも進められない」と戸惑いつつ、「最速の日程を意識して準備するしかない」と気を引き締めた。
選挙関連の用品を陣営に納入する業者の動きもにわかに活発化した。選挙ポスターやパンフレットを取り扱う「イツキプリント」(東京都)には10日朝から、複数の陣営が問い合わせを寄せた。斎藤博社長は「ポスターには特殊な加工を施した紙を使うので、選挙のたびに業者間で取り合いになる。確保するために急いで発注した」と明かす。
選挙カーを貸し出す「グリーンオート」(神奈川県大井町)には与野党の陣営から50件もの連絡が入り、日ごとに貸与できる車やスピーカーの数を確認する作業などに追われた。若狭侍郎社長は「年が明けたばかりでゆっくりしたいのが本音だが、衆院選のドタバタには慣れている。粛々と対応する」と話していた。
定数5増の都内選挙区も準備全力
「1票の格差」を是正するため、前回衆院選で選挙区が25から30に増えた東京都。自民党は比例代表を含め、井上信治・元万博相や萩生田光一幹事長代行などベテラン議員らが18議席を有する。
「自公」の連立で大敗した前回選と異なり、次は「自維」で迎える初の国政選となる公算が大きい。自民党都連幹事長の菅野弘一都議は「いつ解散があってもいいよう新年から地元をしっかり回ってきた。山積する課題を解決して国を前に進めるため、与党が責任をもって力をつけていく必要がある」と議席回復に意欲を示した。
ただ、通常国会の冒頭で解散した場合、新年度予算を今年度中に成立させることは難しくなる見通しだ。立憲民主党都連会長の長妻昭衆院議員は「物価高対策が遅れる中、『(選挙に)勝てる』という都合でさらに遅れることをどう説明するのか」と批判。その上で、「常在戦場で準備している。巨大な企業団体献金にゆがめられている予算編成の問題点を選挙で問いたい」と語った。