「高市早苗は報いを受けるであろう」共産党機関紙から見えてくる、中国首脳の本音《高口康太氏がリポート》

中国における「日本への怒り」の実態はどのようなものなのか? ジャーナリストの高口康太氏が迫った。(文中一部敬称略)
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日中間の「緊張状態」はほぼ10年ぶり?
中国の「制裁」がエスカレートしている。台湾有事に関する、高市早苗首相の国会答弁への反発のはずだが、官製メディアの「環球時報」が社説で「沖縄の日本への帰属に法的な根拠はない」と言い立てたほか、在日本中国大使館が、第二次世界大戦の敗戦国である日本に対しては「国連安全保障理事会の許可なく、直接軍事行動をとる権利を有している」とすでに死文化した国連憲章の旧敵国条項を持ち出して凄むなど、あの手この手を繰り出している。
この煽りを受けて、1月下旬には54年ぶりに日本はパンダ・ゼロとなるほか、旅行客の急減などの「制裁」も行われている。
振り返ると2000年代初頭から2015年頃までは歴史問題、尖閣諸島問題で中国との緊張関係が続いていたが、その後の10年間はちょっとしたトラブルはあっても小康状態にあったと言えよう。この間に日本社会は、中国の行動原理についてだいぶ疎くなってしまった。企業やメディアで、常時緊張状態だった中国担当の人々はすでに別の部署に移っている。だからこそ、中国の怒濤の「制裁」攻勢に改めて驚いてしまうのだ。
そこで、本稿を通じて改めて中国の論理とはどのようなものかを探ってみたい。
外交姿勢を読み解く手がかり
まず、簡単に流れをおさらいしておこう。発端となったのは高市早苗首相の11月7日の国会答弁だ。中国が台湾に武力行使をすれば、日本の存立危機事態になりうると発言した。
中国サイドは日本大使への強い抗議を皮切りに、旅行や留学の自粛や日本人歌手のコンサート中止など一連の「制裁」を始めた。これに対し高市政権は関係改善を模索してきた。同月25日には先の国会答弁は従来の政府見解を完全に維持しているとの答弁書を閣議決定した。発言撤回に近い措置だが、中国外交部の毛寧(マオニン)報道官が「発言撤回という中国の要求を避けたもの」と批判するなど、中国は受け入れていない。
12月6日には自衛隊の戦闘機に対し、中国の戦闘機が30分にわたりレーダーを照射したとされる事件も起きるなど、日本への圧力はさらに高まっている。
原稿執筆時点(12月下旬)でも中国は日本批判の姿勢を崩していない。なぜ、それがわかるのか。中国の外交姿勢を読み解く手がかりとしてわかりやすいのが、中国共産党の機関紙「人民日報」に掲載される、鐘声(ジョンション)のコラムだ。「鐘」の発音は、「中(ジョン)」と似ている。つまり「鐘声」は、「中国の声」を略記した「中声」の掛け言葉で、実在の人物ではなく、中国共産党の重要な外交方針を伝える際に使われるペンネームである。
他にも、党の重要メッセージを伝える任仲平(レンジョンピン、「人〔レン〕民日報」重〔ジョン〕要評〔ピン〕論の掛け言葉)、科学教育関係のメッセージを伝える柯教平(クージャオピン、科教評の掛け言葉)、文芸関連のメッセージを伝える仲言(ジョンイェン、重言の掛け言葉)など、メッセージを伝えるペンネームは複数存在している。ペンネームの由来は基本的には公表されていないが、その正体はよく知られている。
閑話休題。鐘声のコラムだが、2025年4月以降は一貫して対米関係がテーマであった。中身は似たり寄ったりだが、鐘声コラムを見れば今は中国にとって対米関係が最重要課題であることが一目瞭然であった。それが11月14日以後は一転して、日本問題のコラムばかりが続く。原稿執筆時点で最新のコラム(12月15日)は「日本軍国主義の復活防止こそが正義の力の共通の意志だ」。日本との戦いがまだ最重要課題とのメッセージが発信されている。
11月28日には仲音(ジョンイン)のコラム「一線を越えた重大な挑発だ、高市早苗はその報いを受けるであろう」が掲載された。仲音は2022年春に初めて登場した、新しいペンネームだ。コロナ対策のメッセージ発信など、中国について目下重要な問題に言及する、鐘声よりもワンランク格が高いコラムと考えられる。コラムでは「重大な挑発、重大な干渉、重大な逆行、重大な破壊」……など9回も「重大」(原文中国語は「厳重」)が繰り返された。他の中国メディアがこのコラムを転載した際には「9回の重大」なるサブタイトルがつけられ、怒りの深さが強調されている。
※本記事の全文(約9000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(高口康太「 台湾有事発言 中国人民14億人のホンネ 」)。全文では、以下の内容をお読みいただけます。

・「制裁」のゴーサイン

・コンサート中止は日常茶飯事

・フェイクニュースを信じる高齢者
(高口 康太/文藝春秋 2026年2月号)

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