9月13日に投票日を迎える沖縄県知事選は、過去最多の6人が立候補していて、事実上、現職と元官僚の新人の一騎打ちになっています。過去の知事選とは“争点”に変化も…。
沖縄県知事選 現職vs元官僚“事実上の一騎打ち”
現職 玉城デニー候補 「これまでもこれからも、私の価値観を政治にしっかりと生かしていきたい。その言葉が誰一人取り残さない沖縄らしい優しい社会の実現です」
新人 古謝玄太候補 「国政与党に対してしっかりと要求をしていく。国政与党が動かない場合には、国政野党、公明党さん、国民民主党さん、様々な勢力、様々な力を活用していく」
2018年、任期途中に亡くなった翁長前知事の後を継ぎ、知事選に出馬した玉城デニーさん(66)。普天間基地の辺野古移設反対を訴えて初当選しました。
4年前の選挙でも辺野古移設反対を主張し、再選を果たしました。
今回は3期目を目指す玉城さんと、元総務官僚の新人で前の那覇市副市長の古謝玄太さんの“事実上の一騎打ち”となっています。
現職 玉城デニー候補 「平和だからこそ経済、平和だからこそ暮らし、平和だからこそ観光。すべての基本は、平和を目指していく。沖縄県民の共通の崇高な理念の実現に一緒に取り組んでいきましょう」
今回、街頭で「辺野古移設反対」を訴える場面は多くありません。
両候補が重点的に訴えるのは「県民の暮らし」や「経済」
県の税収が過去最高になったことや、子育て支援を充実させたという実績と、今後の社会福祉制度の充実をアピールしています。
玉城さんに挑む元総務省官僚・古謝玄太さんは42歳。
新人 古謝玄太候補 「国のせいで、国を悪者にして、あるいは大企業、県外の資本、こうしたところを悪者にして、沖縄の暮らしが良くならないと嘆くのは簡単ですけれども、それでは沖縄は変わりません」
自民党、日本維新の会、国民民主党、参政党、公明党県本部、日本保守党が推薦するほか、県の経済界も支援。
国や自治体、経済界とのつながりをアピールし、“一人当たりの県民所得倍増”を掲げています。
両候補とも重点的に訴えているのは、県民の暮らしや経済についてです。
辺野古移設に「反対」か「容認」か
これまで沖縄知事選では、普天間基地の辺野古移設に対する立場の違いが争点となってきました。
玉城さんが知事となった翌年、2019年には県民投票が行われ、約7割の県民が辺野古の埋め立てに反対する意思を示しました。
政府は辺野古移設を進める姿勢を崩さず、県は裁判に訴えますが、軒並み敗訴。玉城県政は移設を止める手立てを失い、工事が進む辺野古は大きく姿を変えています。
2026年2月の衆院選では、県内の4議席全てで玉城さんが応援し、辺野古移設に反対の姿勢だった候補が自民党候補に敗れました。
古謝さんは辺野古移設を容認する立場です。
古謝玄太候補(8月14日政策発表) 「大浦湾側も今工事が進んでいる、あるいは辺野古埋め立てを巡る裁判も終結している中では、普天間飛行場の危険性除去方策として最も早い手段として、辺野古移設を容認をしております」
一方、玉城さんの姿勢は変わりません。
現職 玉城デニー候補(8月12日政策発表) 「辺野古新基地建設反対の県民の民意を守り抜くこと。普天間飛行場の早期運用停止・閉鎖・撤去を政府に強く求める姿勢は、これまでと全く変わっておりません」
政府との向き合い方に違いも 「基地問題」「経済」変わる争点
玉城さんと古謝さんの間では、政府との向き合い方にも違いが出ています。
新人 古謝玄太候補 「県政と経済界、県政と市町村、県政と県民をつなぐ。そこでつないだ一つの力にした沖縄の力を中央とつなぎながら、しっかり交渉を対峙していく。そのことによって有言実行の県政が実現をできると思っております」
現職 玉城デニー候補 「普天間基地の閉鎖返還・無条件撤去。そして、那覇軍港もこれから厳しい移設のための審査を加えていく中で、先行返還を実現していくための要求を政府に突きつけていきましょう」
知事選には他にも、兼島俊さん(48)、末吉正弘さん(73)、比嘉隆さん(49)、屋良朝助さん(74)が出馬していて、過去最多となる6人による争いとなります。
注目の沖縄知事選は13日(日)に投開票されます。
広がる“諦め感”と拮抗する民意 辺野古移設をめぐる県民の複雑な思い
上村彩子キャスター: これまでの選挙では大きな争点だった「辺野古移設」が、今回は目立った争点にはなっていないようですが、そうなると沖縄県民の皆さんは何を争点だと思っているのでしょうか?
RBC琉球放送 平田俊一記者: 辺野古移設については、引き続き大きな争点であると考えています。
ただ、県と国の裁判が終結し、現状、沖縄県には工事を止める手立てがない中で、諦め感が広がっているのは確かです。
辺野古移設の賛否を聞いたところ、玉城知事が初当選した2018年は反対が賛成の2倍近かったのですが、現在はほぼ拮抗していて、「どちらとも言えない」が増加しています。
県民の複雑な思いが表れていると感じます。
確かに諦めは広がってはいるんですが、基地負担の多くを沖縄が今後も背負わなければいけないことに、決して納得しているわけではありません。
上村キャスター: 県民が納得しているわけではない中で、候補者が「辺野古移設」について積極的に訴えないのはなぜでしょうか?
RBC琉球放送 平田俊一記者: 3月に起きた「辺野古の転覆事故」が大きく影響していると思います。
ただ、古謝さんが明確に辺野古移設を容認しているため、玉城さんも選挙戦の大きな争点の一つとして、徐々に辺野古移設反対を訴えてきているように感じます。
今回は「基地問題」と「経済」両方が争点に “複雑化”する沖縄の判断
喜入友浩キャスター: 今回6名が立候補していて、情勢調査では古謝さんと玉城さんの接戦と伝えられています。今回の構図をどのようにご覧になりますか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: 沖縄の選挙を長く見てきましたが、大きく見ると「基地問題」が争点になっているときは、いわゆる「革新が有利」。 一方で、「経済」が争点になると「保守が有利」といった選挙が繰り返されてきました。
今回は、いわば両方が争点になるので、「保守」と「革新」が接戦を演じている状況だと思います。
ただ、地方自治は例えば、「自分たちの身近で切実な問題は住民が決められる」というのが原則です。 沖縄の場合は、米軍基地問題は住民が反対しても変えられないという、非常に深刻な問題を抱えていることを我々も考える必要があると思います。
小渕総理や野中官房長官など、歴代の自民党政権は色々な打開策を打ち出し、沖縄の方々に寄り添う姿勢を示していました。しかし、最近の自民党政権は沖縄との接点を探るという熱意がやや欠けてきていると思います。
喜入キャスター: 今まさに沖縄の負担が増している中ですが、在日アメリカ軍基地の専用施設の面積の約7割が沖縄に集中しており、自衛隊のミサイル基地も南西諸島に展開しています。 今、沖縄が置かれている状況についてはどのようにみていますか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: 安全保障の状況を考えると、中国と向き合うために、沖縄は米軍基地を減らしていく必要があります。ただ残念ながら、対中関係では沖縄の戦略的な価値が高まっている状況になっているので、自衛隊の配備などが必要になってきています。
しかし今回、高市総理の台湾有事発言があり、むしろ中国との緊張が高まっている状況の中で、今回の選挙を迎えることになります。沖縄の有権者は、非常に複雑な思いで戦況を判断しなくてはいけないという状況になっていると思います。
中傷・誤情報が拡散「発信の9割が県外から」 SNSで変わる選挙
上村キャスター: 平田記者は今回の知事選を取材する中で、争点以外にも変化を感じたそうですね。
RBC琉球放送 平田俊一記者: SNS上での中傷や誤った情報が、これまでとは比較にならないくらい拡散されていることを感じます。
沖縄県知事選などを含むXの投稿をJNNが調べたところ、リポストを含めた投稿は告示後の2週間で約131万6000件にのぼりました。
これは、誹謗中傷などが大きな問題となった2025年の宮城県知事選挙の3倍に上る投稿数です。さらに、その発信の9割が県外からの投稿であることもわかっています。
上村キャスター: 9割という数字に驚きますが、県外からの情報に候補者や有権者が振り回されることにならないのかと心配になります。
RBC琉球放送 平田俊一記者: 拡散された誤った情報などが、投票行動にどの程度影響を与えたのかというのは、これからの分析になるとは思いますが、どちらの陣営も対策をとらざるを得ない状況となっています。
また、県外からの投稿が大部分を占めていることについては、「沖縄は安全保障上、重要な場所だから当然だ」というようなネット上の反応がある一方で、沖縄の過重な基地負担について触れるような投稿は多くありません。
古謝さんも玉城さんも基地負担の軽減が必要だという点では一致しています。
この不均衡な状況を是正するために何が必要か。誰が知事になったとしても、県知事選挙のときだけではなく、政府には真剣に向き合ってほしいと思います。
上村キャスター: 選挙におけるSNSの問題は、兵庫県知事選や先の衆院選でもありました。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: そうした各種選挙での誹謗中傷問題を受け、与野党が歩み寄りSNSの規制をするための法改正をして、2027年3月から実行されます。
今回の沖縄知事選の非常に悪質な誹謗中傷を見ますと、「果たして、この種の規制だけで十分なのか」ということが指摘されるようになっていますので、なお一層規制を強める議論が出てくると思います。
上村キャスター: 基地問題を含め、国全体に関わる課題もあります。沖縄の選択を私たちは関心を持って見つめる必要があります。
========== <プロフィール> 平田俊一 RBC沖縄県政キャップ
星浩さん TBSスペシャルコメンテーター 1955年生まれ福島県出身 政治記者歴30年